201
再造林放棄林分の発生要因に関する解析(I)―森林の所有形態、立地条件に着目した考察―
野田 巌
(森林総研九州支所)

林 雅秀
(森林総研九州支所)
 育林や再造林の放棄といった形で人工林を中心に管理が適正に行われない森林が増えてきていて、特に南九州のような素材生産量の多い地域で再造林放棄の林分が増える傾向にある。再造林放棄の増加は、地域林業の振興や持続的森林経営、あるいは公益的機能の発揮を妨げることになりかねない。そこで、本報告では熊本県が未植栽林分の所有者に対して行ったアンケート調査結果と森林簿をもとに再造林放棄をもたらす要因と森林の所有形態、立地条件等との因果関係を最適尺度法によって分析した。分析対象地域は球磨川地域森林計画区である。その結果、再造林放棄の理由は所有規模の大小で異なること、また収益に対する満足度が立地要因に応じて異なることなどが明らかになった。その他、再造林地も取り上げ未更新林分の立地条件と比較分析した結果を報告する。


202
宮古島大野山林の樹種構成と成長(3)
漢那 賢作   
(沖縄県林業試験場)

比嘉 政隆
(沖縄県林業試験場)
 宮古島は沖縄本島から303kmの距離にあり、島の大部分が隆起サンゴ礁の石灰岩でおおわれた平坦な島で、水道水をすべて地下水に頼っている。宮古島の森林面積率は16%で、沖縄県平均の46%に対して極端に低い。このような低い森林面積率の中にあって平良市郊外の大野山林はまとまった森林面積を有し、地下水の保全はもとより、生活環境保全林として、また植生を学び野鳥を観察する環境教育の場として大変貴重な森林である。樹種構成とその成長調査データは林分構造考察や森林の保全と利用を図る上で有力な情報となりうるが、そのような実態調査はほとんど行われていない。本研究は、1990年に大野山林に0.1haの固定標準地を設けて、5年後、10年後に毎木調査と下層植生調査を行い、この期間の構成樹種の変化と成長量について解析を行ったので報告する。 


203
暖温帯広葉樹二次林における撹乱履歴と森林動態の解析−鹿児島大学佐多演習林を対象として−
寺岡 行雄
(鹿大農)

馬田 英隆
(鹿大農)
 鹿児島大学佐多演習林は大隈半島の南端である肝属郡佐多町に位置し、海岸林であることから,季節風が強く台風に見舞われる事も多い。1975年に30年〜70年生の広葉樹林を対象とした0.04haの固定試験地4箇所が設定された。90年代初頭,台風による風倒被害を受けた後,1995年に第2回目の測定が行われた。常緑広葉樹林の林分構造ならびに種組成の変化を明らかにするため,第3回目の測定を2001年に行った。測定結果を基にして,台風による撹乱が組成,林分構造および草本層へ与える影響を分析した。


204
ヤクスギ天然林3固定試験地における林分構造とその動態解析
高嶋 敦史
(九大農)

舛木 順二
(九大農)
光田 靖
(九大農)
吉田 茂二郎
(九大農)
村上 拓彦
(九大農)
今田 盛生
(九大農)
 屋久島のヤクスギ天然林で、1973年から継続調査が実施されている。これまで、ヤクスギランド(屋久島自然休養林[荒川地区])内に位置する3つの固定試験地で、3度の測定が完了した。これらの固定試験地の面積は、いずれも1.0haである。本研究では、長期的なヤクスギ天然林の林分構造の動態を把握する目的で、3つの固定試験地で得られたデータを用い、樹種構成、直径階別本数分布、枯死および進界について解析を行った。さらに、成長データをもとに試験地の林分動態を表す遷移モデルを作成し、ヤクスギ天然林の動態予測も行っている。


205
遷移行列の固有値による択伐林の施業評価-置戸照査法試験林を事例として
舛木順二
(九大農)

村上拓彦
(九大農)
吉田茂ニ郎
(九大農)
今田盛生
(九大農)
 北海道置戸では昭和30年以来針広混交林を対象にした照査法による択伐林施業の試験研究が行われている。筆者らは試験研究を効率的に進めるために施業支援システムの構築を目標に研究を行っている。本発表では,支援システム構築を行う上での一指針を得る目的で,各林分の遷移行列を2種類作成し,それらより算出した固有値に対する弾力性分析により各直径階の林木個体の林分動態への寄与を評価した。また,固有値に対する感度分析により伐採の林分成長に及ぼす影響を評価した。弾力性分析の結果からは,両樹種とも小・中径木の成長促進を念頭に置いた施業を実行することが必要であることが,感度分析の結果からは,直径階が小さいほど林分の成長に対する伐採の影響が大きいことが,それぞれ示唆された。 これらの情報は支援システム構築にとって有用である。