308
チーク(Tectona grandis)におけるクローン管理システム構築に向けたMuPS(Multiplex-PCR of SCAR Markers)の開発
=多型RAPDフラグメントのスクリーニングとそのSCAR化=
AYPBC Widyatmoko
白石 進
(九大)
 インドネシアでは600万ha以上のチーク (Tectona grandis L.)の植林地がある。育種プロジェクトが行われており、優良な形質を有する個体(精英樹:plus tree) が多数選抜されている。選抜された精英樹クローンを確実に管理することは育種事業を推進する上で不可欠である。しかし、現在、クローンの同定は、葉の形や樹皮の形状といった外見上の特徴をもとに行われており、正確に同定する方法は未だない。そこで、本研究室では、チークにおいてMuPSの開発を進めている。これまでにRAPDプライマーを用いて多型フラグメントのスクリーニングを行った。318RAPDプライマーをスクリーニングした結果、246個の多型フラグメントを選抜した。さらに、いくつかの選抜したフラグメントのクローニングングを行い、塩基配列を決定し、これをもとに数個のSCARマーカーの開発を行った。


309
Populus tremulaのクローン識別のための新たなDNA分子マーカー (MuPS : multiplex PCR of SCAR markers)の開発
久枝 和彦
(九大)
白石 進
(九大)
北村 系子
(森林総研)
 Populus tremulaは広い範囲に地下茎を張り巡らし、栄養繁殖することが知られている。その範囲は極めて広大であり、そのクローン構造を分析することは容易ではなかった。そこで多数の分析試料を容易に解析できる新たなDNA分子マーカー (MuPS : multiplex PCR of SCAR markers) を開発した。MuPSは、RAPD (random amplified polymorphic DNA) の再現性を高め、multiplex PCR によって分析効率を高めたDNA分子マーカーである。これまでスギとアカシアで開発されている。今回Populus tremulaのクローン分析用に開発したMuPSは、1セットあたり6遺伝子座の情報を有し、これが3セット(合計18遺伝子座)あることから218=262,144通りのDNA型を識別することができる。


310
ヒノキマイクロサテライト分析の効率化
-Multiplex PCR化-
中島 康介
白石 進
(九大)       
  ヒノキは日本における主要造林樹種であり、その育種的改良を行うためには品種識別や親子鑑定を行う必要がある。近年、中尾ら(名大)によりマイクロサテライトマーカーが開発された。このマイクロサテライトマーカーを効率良く用いる方法の一つとしてMultiplex PCR化がある。本研究では、中尾らが開発したマイクロサテライトマーカーをMultiplex PCRで分析する系の開発を行った。まず最初に、MgCl2濃度を一定にし、アニ?リング温度の決定を行った。その結果、55℃が最適であった。中尾らの9マーカーの内7マーカーをフラグメント長により3セット(3・2・2)に分けた。そしてPCRにおける全フラグメントの増幅が分析に支障がない範囲になるように、プライマーの濃度比を調整した。その結果、良好な結果が得られた。この分析系を用いることにより、従来よりも著しく高い分析効率が得られる。