314
鹿児島県産スギ精英樹の材質特性(T)−ヤング係数による品種間差について−
長濱 孝行
(鹿児島県林試)
 鹿児島県産スギ精英樹のうち,材質調査要領(林木育種センター:1996)に基づき,5年間で計35品種の材質調査を実施した。スギ精英樹の成長特性と材質特性を併せた見知から品質管理型林業を目指す上での資料を得るため,また,昨今の採穂園等の統廃合が行政的に進められる一方で,効果的な品種選定の判断資料を得ることを目的としている。今回は,特に構造材の材質指標として有効とされるヤング係数を中心に,本県産スギ精英樹での品種差を比較・検討した。この中で,日置1号は他品種に比べ有意な結果を得たが,同在来品種型である鹿児島1号についてはこの傾向を示さず,品種整理の必要性が示唆された。


315
ファコップを用いた材質優良個体の非破壊的選抜技術
藤澤 義武
柏木 学
井上 祐二郎
(林育セ九州)
 品質管理型の林業の確立による産地の形成においては、材質優良個体の選抜や伐期の材質の予測が重要な要因であり、そこでは、樹体を傷つけることなく立木のヤング率を測定する技術が求められている。この面において、小泉が開発したぶら下がり法は、完全に非破壊かつ高精度で立木のヤング率を測定できる優れた手法である。しかし、測定に熟練と比較的多くの労力を必要とする点が、本手法を実用する上での障害となっている。そこで、簡便かつ効率的に立木のヤング率を測定する手法として、樹幹内の応力波伝搬速度による測定法の可能性を検討した。本報告では、ハンガリーで開発されたファコップを応力波の伝搬時間の測定に用い、測定効率と精度を検討した。


316
凍裂被害を受けやすいスギ品種について
馬場 信貴
(佐賀林試)
 佐賀県北部のスギ造林地において凍裂被害が確認された。被害地の標高は約620m、被害木の林齢は37〜38年生である。凍裂痕(いわゆる「へびさがり」)の発生は、胸高部を中心にして地際付近から約2〜3mの部位に見られ、特定の品種において高い頻度で確認された。今回、品種別の被害発生率等を調査したので、その概要を報告する。