317
楕円フーリエ記述子を用いたハゼノキ葉形変異の評価方法の検討
平岡 裕一郎
佐々木 峰子
倉本 哲嗣
岡村 政則
(林育セ九州)
 果実から木蝋が採取されるハゼノキは重要な特用林産樹種の一つである。ハゼノキには古くから多くの在来品種が存在し、それらは葉や果実の形状の差異を基準として品種識別される。またこれらの形状の決定は遺伝的要因に依るところが大きいと考えられる。これらの形状の特徴の中から、他の重要形質(例えば木蝋含有量)と連鎖したものが発見されれば、優良形質個体選抜の為のマーカーとなりうる可能性がある。特に葉は入手が容易なため、葉形を定量的に把握する方法を確立することは重要であろう。形を定量的に表現する方法の一つとして、楕円フーリエ記述子を用いる方法があげられる。この方法は、これまで用いられてきた、幅、長さ、重心位置等の測定といった方法と比較して、形状の輪郭の特徴を全て表現できるという点で有用である。本研究では楕円フーリエ記述子を用いたハゼノキ葉形の評価方法とこの方法による変異抽出能力の程度を検討した。


318
マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツの挿し木による増殖(V)
―ミスト装置を用いない挿し木方法等の検討について―
宮崎 潤二
(佐賀林試)
 佐賀県林試ではマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツの挿し木による増殖に取り組んでおり、これまでにマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ採種園産の若い実生を採穂母樹とする事で比較的高い発根率を得ている。 (日林九支論,51,47-48)
 また、採穂母樹により発根性や、クロマツ挿し木苗にマツノザイセンチュウの接種検定を行った場合の健全率にクローン間差違がみられたことを報告している。(九州森林研究,55,153-154)
 今回は育苗コスト低減等を目的として、ミスト装置のない、より簡易な施設を利用した挿し木方法等について若干の検討を行ったので報告する。


319
抵抗性クロマツ実生苗の剪定時期による不定芽発生量の変動
佐々木 峰子
倉本 哲嗣
平岡 裕一郎
岡村 政則
藤澤 義武
(林育セ九州)       
 マツノザイセンチュウ抵抗性クローンは,抵抗性がテーダマツ以上という基準で選抜されたため,その抵抗性には多少の変異がある。抵抗性クローンを親木として生産される実生苗ではさらに抵抗性の変異が大きく現れるため,材線虫を人工接種して抵抗性の低い個体を淘汰し,生き残った個体を山出ししている。この生産方法は抵抗性の高い個体を確実に選出する目的で行われているが,コストおよび労力がかかること,また気象条件等により生存率が左右されるため年によって得苗本数が変動するという問題がある。効率的なクローン増殖技術を開発することでこの問題を解決するため,不定芽を用いたさし木試験を実施している。この際,効率的にさし木穂を得るために抵抗性クロマツの実生から多数の不定芽を得る必要がある。そこで2・3年生の実生苗を時期を変えて剪定し,誘導された不定芽の発生量の変動を調査してより多くの不定芽を得る剪定時期を検討した。