407
皆伐跡地に播種した木本植物の初期成長
横尾 謙一郎
(熊本林研)
 
 熊本県では球磨地域を中心に,大面積皆伐後,植栽されない,いわゆる未更新林分が目立つようになってきた。伐採後,植生の回復は進んでいくが,伐採前の条件によってその状態は違ってくる。つまり,伐採前に林内の光環境が良く,下層植生が発達している場合は,木本植物が被覆するまでの期間は短い。しかし,立木密度が高く,林内表土がむき出しの状態になりやすいために,林地保全上にも問題がある。そこで,植生の侵入が少ない皆伐跡地において,数種類の木本植物の播種を行い,早期緑化の可能性について検討したので,その結果を報告する。


408
半乾燥地における植栽木の枝打ちによるダイバック抑止
矢幡 久
野田光弘
辻 祥子
Bernald K. Kigwa
(九大・林野庁)
 半乾燥地では、葉における蒸散に見合えるだけの土壌水分が不足するために、強い水ストレス状態が起こり、乾燥によって枝の枯れ下がり(ダイバック)現象がみられる樹種がある。これを抑制するには、下枝打ちを行い、蒸散量を抑制するのが一つの対策になると予想される。そこで、1996年11月に植栽したSennasiameaの植林木について1999年に枝打ち高さによって無処理区、1/2区、2/3区の3区を設け、2001年8月に対照区と枝の枯れ下がりと、樹高および胸高直径の成長を比較した。その結果、枝打ちによってダイバックが抑制され、樹高成長が無処理区と比べて、有意に大きくなった。しかも、1/2区では、直径成長も無処理区よりも有意に大きくなり、樹幹の成長量を大きくする効果のあることがわかった。枝打ちによるダイバック抑制効果が高いのは、枝枯れの起こしやすいSenna siameaなどの道管の比較的大きい樹種で有効と考えられる


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列状間伐林における高性能林業機械を用いた集材が林地に与える影響ついて
山田 康裕
(大分林試)
 列状間伐後の高性能林業機械を用いた集材作業が、特に表層土壌や林床植生といった林地に与える影響について調査を行なった。調査林分は、大分県玖珠郡の32年生ヒノキ林で、平成14年5月に3残1伐で列状間伐を行なった後、スウィングヤーダを用いてスナッビング式による集材を行なった。林分内に20×25mの調査区を設け、降雨により流出する土壌を採取するための土壌トラップを間伐列と残存列に4ヶ所ずつ設置して、集材後3ヶ月間の流出量について調査した。また、間伐列と残存列内の林床植生のバイオマスについて比較を行なった。調査の結果、間伐列と残存列における表層土壌の流出量は、有意差はなかったものの期間を通して間伐列が上回っていた。林床植生のバイオマス量は、残存列が間伐列を有意に上回っており(P<0.05)、高性能林業機械を用いた集材による林地攪乱の影響が見られた。