416
帯状複層林施業地における下層植生の多様度の発現要因
石上 智士
伊藤 哲
溝上 展也
(宮大)  
 生物多様性の保全を考慮した持続的森林経営が求められる中で、さまざまな施業方法が試行されている。そのひとつに、樹高幅程度の帯状伐採による帯状複層林施業がある。我々は、宮崎県諸塚村内の帯状複層林試験地において下層植生を調査し、帯状伐採後のスギ更新地では一斉皆伐後のスギ林に比較して、より自然林の種組成に近い下層植生が成立していることを報告した。本研究では、その発現メカニズムを明らかにする目的で、光環境および埋土種子組成を調査し、下層植生の種組成との対応を分析したので報告する。


417
林畜複合生産システムが林床植生の種組成および種多様性に及ぼす影響
伊藤 哲
石上 智士
西脇 亜也
(宮大)
 宮崎県諸塚村で行われている林内放牧による「林畜複合生産システム」は、低コスト森林施業技術の一つとして放牧を活用する複合的土地利用・管理システムである。森林管理の面からは、下刈労力軽減の効果が期待されるが、一方で水質や植物群集に対するインパクトなどが予想される。そこで本研究では、放牧地(放牧区)の林床植生を、人手で下刈りが行われた林地(下刈区)、および下刈期間が終了し放置された林地(放置区)と比較し、林内放牧が植物群集の種組成および種多様性に及ぼす影響を評価した。その結果、放牧区では種の均等度がやや低かったものの、多様度および木本種の消失度合は下刈区とほぼ同等であった。また、DCAによる序列の結果、放牧区の種組成は放置区により近かった。以上の結果から、今回調査対象とした林内放牧の植生に対するインパクトは、人手による下刈と同等またはそれ以下であると推察された。


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林内放牧が林床植生の地上部現存量に及ぼす影響
西脇 亜也
杉本 安寛
(宮大)
 宮崎県諸塚村で行われている林内放牧による「林畜複合生産システム」は、低コスト森林施業技術の一つとして放牧を活用する複合的土地利用・管理システムである。森林管理の面からは、下刈労力軽減の効果が期待され、家畜管理の面からは飼料や糞尿処理のコスト軽減効果が期待される。そこで本研究では、造林地での肉用牛の放牧によるプラス面として下刈り効果と飼料草確保を考慮し、放牧が林床植生の地上部現存量に及ぼす影響評価を試みた。1999年には放牧前後差法によって、2000年と2001年には禁牧区法によって放牧が地上部現存量に及ぼす効果を測定した。その結果、地上部現存量は、放牧により約7割減から8割減となった。特に草本類やタケ類の放牧による減少程度は大きかった。以上の結果から、放牧による下刈労力軽減の効果は大きいことが明らかとなった。