501
九州のブナ天然林の生態に関する研究(Y)
−釈迦・御前岳山系天然林の植生的特性−
井上  晋
山野辺捷雄
(九大)
 森林の孤立・断片化は樹木個体群の推移や群集動態に重大な影響を及ぼすと言われ ており,その影響を予測するためには長期的な観測データが必要である。鹿児島県大口市にある孤立化した照葉樹林では1989年に毎木調査が行われており,演者らは11年後の2000年に再測を行った。その結果、イスノキ、クスノキ科亜高木、ツバキ科亜高木種の更新は安定的であり、現時点では孤立化の影響は小さいことがわかった。しかし、主要な林冠構成種であるブナ科高木種はほとんど更新しておらず、一部の亜高木種にも同様な傾向がみられた。また、低密度であった樹種にはほぼ消失したものもあった。これらの樹種では今後孤立化の影響が強まることが危惧される。全体的には、多くの樹種にまだ更新能力が残っており、林分が更新のコアとして機能する間に孤立化の解消が必要であると考えられた。     


502
孤立化した照葉樹林における樹木個体群構造の変化
小南 陽亮
佐藤  保
齊藤  哲
永松  大
田内 裕之
(森総研九州)
 森林の孤立・断片化は樹木個体群の推移や群集動態に重大な影響を及ぼすと言われ ており,その影響を予測するためには長期的な観測データが必要である。鹿児島県大口市にある孤立化した照葉樹林では1989年に毎木調査が行われており,演者らは11年後の2000年に再測を行った。その結果、イスノキ、クスノキ科亜高木、ツバキ科亜高木種の更新は安定的であり、現時点では孤立化の影響は小さいことがわかった。しかし、主要な林冠構成種であるブナ科高木種はほとんど更新しておらず、一部の亜高木種にも同様な傾向がみられた。また、低密度であった樹種にはほぼ消失したものもあった。これらの樹種では今後孤立化の影響が強まることが危惧される。全体的には、多くの樹種にまだ更新能力が残っており、林分が更新のコアとして機能する間に孤立化の解消が必要であると考えられた。


503
照葉樹二次林における樹木のハビタット選択性と共存機構
井藤 宏香
伊藤  哲
(宮大)
 近年、生物多様性の保全を目的とした森林管理の方策が求められている。森林を構成する樹木の多様性を維持・管理するためには、本来自然林の中でどのような共存機構が存在するかを明らかにする必要がある。しかしながら、照葉樹林構成種については、これらの情報が欠落しているのが現状である。本研究では、宮崎大学田野演習林の照葉樹壮齢二次林(約80年生)に設置された1haプロットの森林構造および地形データを解析し、主要構成種のギルド分類および各樹種の地形依存性の解析を行った。この結果を基に、照葉樹二次林の種多様性維持メカニズムおよび樹木の共存機構について検討したので報告する。