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混交樹種から見た絶滅危惧種ヤクタネゴヨウの立地選択
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永松 大
小南 陽亮 佐藤 保 齊藤 哲 (森総研九州) |
絶滅危惧樹種ヤクタネゴヨウは他の様々な照葉樹と混交して生育するため、適切な保全対策を取るためには混交樹種との関係について明らかにする必要がある。ヤクタネゴヨウと混交樹種が生育する微環境に違いがあるかどうかについて明らかにするため、屋久島西部林道沿いの尾根斜面内でヤクタネゴヨウの分布様式を調査し、ヤクタネゴヨウを含むパッチと含まないパッチの林分構造についての比較を行った。その結果、ヤクタネゴヨウ林分に特異的に現れる混交樹種は見られず、ヤクタネゴヨウ林分とその他の林分の林分構造はヤクタネゴヨウの有無が最も大きな違いであった。これより、尾根斜面内でのヤクタネゴヨウの立地選択性は弱く、潜在的には尾根斜面全域にヤクタネゴヨウ生育の可能性があるものと考えられた。 |
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アカガシの個体群構造に基づいた更新実態の解析
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慶田 祥子
(九大農) |
本研究は、アカガシ天然林の個体群を胸高直径(Dbh)を指標に個体群を6つの成長段階に分け、それぞれの分布相関から更新実態の解明を試みたものである。鹿大農学部附属演習林内でアカガシが優占する林分に50m×60mの調査区を設け、出現したアカガシ全個体の根元位置、胸高直径を測定した。また、シードトラップを設置し、堅果の落下量と落下時の水平分布パターンを調べた。その結果、落下堅果の水平分布及び当年生実生の分布はDbh>30pの成熟個体の分布と高い正の相関を示したが、当年生実生稚樹を除くDbh<12pの個体とDbh>30pの個体とは排他的な分布を示した。以上の結果から実生段階の稚樹は母樹の近くに分布するものの、成長の進んだステージの後継樹は母樹から離れた場所で成立することが明らかになった。これらの結果をもとに、個体群の更新メカニズムと林内環境との関係を考察する。 |
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アカメガシワとカラスザンショウの発芽後の光環境への適応性の比較
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志風 伸幸
玉泉幸一郎 (九大農) |
先駆性樹種であるアカメガシワとカラスザンショウはともに埋土種子を形成するが、アカメガシワの方がカラスザンショウよりも暗い光環境下で発芽する特性を有することを明らかにした。両種は発芽後も光に対する反応性が異なることが考えられた。そこで、苗畑において播種・発芽した実生を、寒冷紗を用いて七段階に被陰処理を施し、各光環境下での光合成量、成長量、枯死数などを比較した。これらの結果について報告する。 |
507 |
海岸クロマツ林における広葉樹侵入がマツの外生菌根に及ぼす影響
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香川 珠実
玉泉幸一郎 (九大) |
マツ林衰退の原因のひとつにマツ林の放置があげられる。マツには多くの外生菌根菌が共生しているが、放置されたマツ林では土壌の富栄養化に伴い、これらの菌根菌の状態も変化すると考えられている。しかし昨年の研究では、富栄養化に加えて、広葉樹の侵入が菌根菌に関与している可能性が示唆された。すなわち、広葉樹の根元に子実体はほとんど発生せず、広葉樹の樹冠で被圧されない場所に発生した。そこで本研究では、広葉樹の侵入とマツの外生菌根形成との関係を明らかにするために、マツ林に生育する広葉樹の根系調査を実施した。下層に生育する広葉樹の幹を中心として半径1.5mの範囲で地下部を掘り起こし、広葉樹とマツの根茎および菌根の分布を調査した。 |