610
熊本県におけるシカ被害実態調査
宮島 諄二
(熊本林研指)
熊本県では、改正された「野生鳥獣の保護及び管理に関する法律」の平成11年度からの施行に伴い、県下のシカ被害の推移の実態を把握するため、平成12年度から、県下のシカ被害林320箇所に定点を設置して、シカ被害の実態を調査した。初年度の平成12年度の調査、被害は320箇所中箇所に確認され、本数被害率はスギで3.9%、ヒノキ10.3%であった。また、平成13年度の調査の結果、新たに被害が確認された箇所は83箇所と調査箇所全体の26%にのぼった。


611
ニホンジカによる剥皮害の実態
野口 琢郎
(熊本林研指)
熊本県では、県南部を中心にシカによる剥皮害が大きな問題となっている。このことから、今回、ほとんど調査されていない被害の年次的変化を明らかにするため、被害木を樹幹解析し、被害の発生年を調査した。被害は1988年以降、毎年、連続的に発生しており、1999年以降の3カ年に集中して発生していた。


612
鹿児島県阿久根大島におけるシカ生息密度推定法の検証
住吉 博和
(鹿大)
平田 令子
清久 幸恵
シカ被害の深刻な地域では特定鳥獣保護管理計画を策定し,シカの生息数管理に着手しているが,生息数管理における最も重要なデータである推定生息数の把握方法についてはその精度を検証した事例は少ない。今回,シカの生息数が把握され生息地域が隔離されている鹿児島県阿久根大島において,糞粒法による生息密度調査を行いFUNRYUプログラムとテーラー・ウィリアムスの式を用いて推定式の精度について検討した。両方法の推定生息密度算出値とも実際の密度に近似し高い精度であった。また,調査方法の容易さからFUNRYUプログラムによる推定方法はより実用性が高いものと思われた。


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補間モデルを用いたニホンジカ生息密度ポテンシャルの分布様式の検討
近藤 洋史
(森総研九州)
池田 浩一
小泉 透
今田 盛生
吉田 茂二郎
野生鳥獣の中でも,特にニホンジカによる森林被害は,近年,深刻な状況が続いている。九州地方では,その被害実態の把握や監視体制はようやく整備されつつあるというのが現状で生息分布やその密度の解析は課題となっている。筆者らは,これまで福岡県東部地域においてGIS(地理情報システム)の地形解析技術を応用してニホンジカ生息密度ポテンシャルマップの作成を行ってきた。本報告では,そのポテンシャルマップにIDWという補間モデルを用いて,その作成手法を示すとともにその分布様式について検討した。その結果,補間モデルを応用した場合の方が,戦略的に分散されたサンプル地点より得られた情報を用いて連続した空間分布を表すことが可能になったと考えられた。また,当地域におけるニホンジカの分布様式であるが,約10km四方の範囲に集中していることなどが明らかになった。