701
深層崩壊発生場の予測法の開発
−出水市矢筈岳モデル流域における検討−
渕 琢磨
(鹿大農)

地頭薗 隆
(鹿大農)
下川 悦郎
(鹿大農)
  1997年7月鹿児島県出水市針原流域で地下水に関与した深層崩壊が発生した。現在、矢筈岳山体流域をモデルとして、深層崩壊発生のメカニズムの解明とその発生場の予測手法の開発を目的とした研究を進めている。
 矢筈岳山体流域は、年流出率40〜50%程度であり、深部浸透している雨水が多いことが分かった。河川縦断方向に低水時の流量観測と水質調査を行った結果、比流量、EC、SiO2が急激に変化する標高があることが判明した。この付近に地下水が賦存している可能性がある。比流量、EC、SiO2といった因子は、深層崩壊発生場の予測のための指標として有効であることが明らかになった。


702
シラス斜面脚部の崖錐崩壊のメカニズムとその発生場の予測
鈴木 理
(鹿大農)

地頭薗 隆
(鹿大農)
下川 悦郎
(鹿大農)       
  近年、南九州では地下水が関与した崩壊が目立つ。その一つに、シラス斜面脚部に発達した崖錐のパイピング崩壊がある。現在、シラス谷に試験地を設けて、崖錐内の地下水位、台地内からの地下水流出量、降水量などの水文観測を行い、崖錐崩壊発生のメカニズムの解明とその発生場の予測を目的とした研究を進めている。シラス斜面脚部の崖錐内の地下水位上昇は、シラス台地内からの地下水流出に起因していることが判明した。この地下水流出が、崖錐内部の飽和と地下水圧の増加を招いて、崖錐の流動化を引き起こした。また、崖錐内部の地下水位変動にはマトリックス流に関係する長期的変動と、パイプ流に関係する短期的変動がある。崩壊発生の予測には、この地下水位の二つの変動を考慮する必要がある。さらに、シラス谷の低水流量は、崖錐崩壊発生場所を抽出する指標として有効であることがわかった。