409
リュウキュウマツ成木への線虫接種検定
中平康
(沖縄林試)
 松材線虫病に対して抵抗性の高いリュウキュウマツを選抜するため、一次検定で生き残ったリュウキュウマツ成木70本に対して、平成13年から2年間、線虫接種検定を行った。接種源には島原個体群を用い、40,000頭/1本を接種した。試験期間中、樹脂滲出および見た目の健全性について経時的な観察を行った。結果、2回の線虫接種検定による枯死率は18%であり、二度の接種検定により生き残ったリュウキュウマツが抵抗性を有している可能性が示唆された。枯死に至った個体はすべて、樹脂滲出が停止したのちに、可視的な病徴を示した。一方、枯死に至らない個体において、樹脂滲出が回復する現象が認められた。


410
リュウキュウマツ枯死木から分離したマツノザイセンチュウのアイソレイト間による病原力の変異
岡村政則
中平康子
秋庭満輝
倉本哲嗣
佐々木峰子
平岡裕一郎
(林育セ九州)
 沖縄県ではリュウキュウマツのマツノザイセンチュウ(以下ザイセンチュウ)による被害が拡大している。この対策としてザイセンチュウに抵抗性を持つ苗木を供給する目的で抵抗性個体の選抜を進めている。現在,接種検定用のザイセンチュウは,抵抗性育種事業と同じ「島原個体群」を使用している。このザイセンチュウと沖縄県産のザイセンチュウの加害性を比較するために3地域,6アイソレイトのザイセンチュウを用いて抵抗性クロマツ自然受粉後代に接種試験を行った。その結果,枯損率はアイソレイトによる差が見られ,病原力は島原個体群と同程度かそれよりも低かった。


411
マツノザイセンチュウ接種検定合格苗の抵抗性の有効期間に関する研究(U)
―6年間の結果―
宮原文彦
森康浩
小河誠司
(福岡森林技セ)
 クロマツ苗にマツノザイセンチュウを人工接種して生き残った苗が、その後の再度の線虫侵入に対してどの程度抵抗性を保持しているかを確認する目的で、1997年度から継続試験を行っており、これまでの6年間の結果について報告する。 初めて接種した区における被害は、接種年度間で極めて高い有意差が認められた。これまでに複数回接種した区について、2002年度における生存率の低下を接種間隔別に見ると、連年接種区の方が低下が小さく、接種間隔の広かった(3年後や6年後に再接種した)区の低下が大きいように見受けられる。 一方、連年接種区において過去6年間を通じて健全であった個体が6本認められた。これらの個体はマツノザイセンチュウ或いは水ストレスに対しての抵抗性の高い個体であると思われた。


412
クロマツ当年生苗に対するマツノザイセンチュウの接種と枯損経過
佐々木峰子
倉本哲嗣
平岡裕一郎
岡村政則
藤澤義武
(林育セ九州)
 抵抗性クロマツをさし木で増殖する際,加齢による発根率の低下を防ぐため,採穂台木となる抵抗性個体をできるだけ早く選抜することが苗木生産上効率的である。そこで,当年生苗の抵抗性の差異を評価することができるのかを検討するため,接種検定を行った。材料は抵抗性クロマツの2家系を用いた。これらを2003年4月10日に播種し,同年7月24日にマツノザイセンチュウの接種を行った。接種はペンチで上部の主軸をつぶし,スポンジ状にした部分にマツノザイセンチュウ懸濁液を投与することによって行った。接種頭数は苗木一本あたり0,50,100,500,1000頭とし,各家系3反復した。これらの処理区を1週間ごとに調査し,枯損経過を解析した。また,同じ家系の1年生苗に0,500,1000,5000,10000頭をそれぞれ接種し,苗齢による枯損の差を比較した。


413
花粉親が異なる抵抗性クロマツ家系の枯損経過の比較
倉本哲嗣
佐々木峰子
岡村政則
平岡裕一郎
柏木学
井上祐二郎
藤澤義武
(林育セ九州)
 マツノザイセンチュウ抵抗性育種を進める上で、接種試験後どのようにマツが枯れていくのかを明らかにすることは、枯損のメカニズムならびに抵抗性に関する遺伝様式を解明する上で重要である。そこで、クロマツ抵抗性採種園産田辺54家系400個体を対象として、DNAマーカーを用いて花粉親の同定を行った後、花粉親との組み合わせで表現型や枯損パターンに差があるかどうか検討した。