307
21年生ヒノキ人工林における埋土種子の発芽量と種構成
谷口 奨
(九大生資学府)
作田耕太郎
井上昭夫
溝上展也
 複層林施業の一つである帯状間伐は、種の多様性を維持しつつ、 植栽個体の良好な成長が期待できる施業であるとされている。  筆者らは、昨年の報告において帯状間伐後3ヶ月間での樹木種の多様性の増加 について示した。樹木種の多様性の増加は間伐による光環境の好転と、それに伴 う埋土種子由来の実生の増加に起因すると考えられた。しかしながら、当該林分 内での埋土種子の実態については明らかにしていない。  本研究ではヒノキ人工林における発芽可能な埋土種子量とその種構成を明らか にすることを目的とし、九州大学立花口圃場内の21年生無間伐ヒノキ人工林分、 ブナ科落葉広葉樹林分および樹木の植栽されていない開放地より表層土壌を回収 し,九州大学構内苗畑で発芽試験を行った。


308
暖温帯の人工林に定着する広葉樹量の予測
齊藤 哲
(森林総研九州)
猪上義信
野田亮
山田康裕
佐保公隆
高宮立身
横尾謙 一郎
小南陽亮
永松大
佐藤保
梶本卓也
手入不足で木材生産機能を十分発揮できない人工林の管理指針のひとつとし て,多面的機能を兼ね備えた針広混交林への誘導が考えられる。本研究では, 人為的に手をかけなくても目的とする混交林へ誘導できるかの判断材料を提示 するため,針葉樹人工林に自然に定着する広葉樹量の予測モデルの構築を試み た。そのために福岡,大分,熊本,宮崎の64箇所で人工林内に定着している広 葉樹類を調査し,定着量に及ぼす要因について解析した。その結果,人工林の 林齢,天然林からの距離,傾斜などが定着量に大きく影響していると考えられ た。今回解析した中では,種多様性に関係する侵入樹種数と木材資源としての 有用樹を含む先駆性高木種の定着量が,比較的高い信頼性で予測出来た。


309
九州大学福岡演習林における長期森林動態試験地の樹種構成および林分構造について
井上貴文
(九大生資学府)
長慶一郎
鍛冶清弘
椎葉康喜
山内康平
井上一信
作田耕太郎
田代直明
井上 晋
九州大学福岡演習林内には、植栽後約100年が経過したスギ不成績造林地で、現在は常緑広葉樹二次林となった森林がみられる。このように比較的古い履歴が分かっている暖温帯上部の広葉樹二次林は多くはなく、その遷移メカニズムや多様性維持機構を解明するために、長期動態を調査していくことは有益であると思われる。そこで福岡演習林内に面積1haの森林動態調査区を設定した。今回はその第一回目の調査として、調査区の樹種構成や林分構造を把握することを目的とし、胸高周囲長の測定と出現樹種の同定を行った。ここでは、斜面形状による出現樹種や個体数の分布の違い、また樹種による直径頻度分布の違いなどについて報告する。