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大規模皆伐跡地における前生稚樹の成長とニホンジカの採食の影響
野宮治人
(森林総研九州)
矢部恒晶
前田勇平
近年、スギ・ヒノキ林を大規模に皆伐して造林未済のまま放置する事例が、南九州を 中心に増加している。将来の人工林資源の枯渇や、災害の発生などが危惧されるととも に、皆伐跡地に森林を速やかに再生させることが望まれている。一方、九州各地でニホ ンジカ(以下シカ)が増加し、人工林に限らずシカによる採食の影響が報告されてい る。2001年から2002年にかけて45年生のスギを皆伐した熊本県球磨村の大規模皆伐跡地 (約95ha)において、伐区中央と林縁に調査区を設定し、森林再生に重要とされる前生稚 樹の成長と、シカの採食影響を調査した。樹高2mを超えた前生稚樹43個体の地際円板の 採取により、高木性のアラカシやタブノキなどは8-26年生と推定され、定着時期は様々 であった。皆伐翌年から急激に肥大成長する一方で、皆伐直後からタブノキを中心にシ カの剥皮痕が見られた。大規模皆伐がシカ密度を高めたか、シカの剥皮行動を誘発した 可能性がある。  


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針葉樹人工林への広葉樹の侵入と果実食性鳥類による種子散布
平田令子
(鹿大農)
畑 邦彦
曽根晃一
第59回日本林学会九州支部会において、針葉樹人工林への果実食性鳥類による種子散布について報告した。そこで今回は、果実食性鳥類による種子の散布状況と、人工林内の広葉樹の稚・幼樹の侵入・生育状況の関係を明らかにするために、鹿児島大学農学部附属高隈演習林内の、常緑広葉樹林が隣接するスギ人工林(45年生)において1.2haのプロットを設定し、2003年4月からプロット内に生育する胸高直径5cm以下の、鳥散布性の広葉樹の稚樹と幼樹の種類と生育本数を記録し、各個体の地際直径、胸高直径、樹高を測定した。これらの結果より、果実食性鳥類による種子散布がスギ人工林内のこれら広葉樹の侵入・定着に与える影響について報告する。