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針葉樹人工林伐採後の森林再生と土壌環境の関係
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山川博美
(鹿大農) 伊藤 哲 保坂武宣 吉田茂二郎 中尾登志雄 |
これまでに針葉樹人工林伐採後の森林再生について空中写真の画像解析によって、伐出路の開設や過去の土地利用履歴といった人為的な要因が強く影響していること、 および伐採以前の前生樹由来の更新個体の重要性を報告してきた。そこで、本研究では、現地調査によって人工林伐採跡地と常緑広葉樹林伐採跡地の森林再生状況を比較 しながらこれまでの研究成果の検証、および伐採後の植生と土壌環境との関係を明らかにすることを目的とした。伐採後の植生は、先駆種優占群落、ヒノキ優占群落、お よび常緑広葉樹優占群落に分類することができた。中でも、常緑広葉樹優占群落は、伐採前から存在した前生樹の萌芽が森林再生に強く寄与していた。また、先駆性樹木 の個体数は、土壌のA層が欠落している場所および薄い場所で減少する傾向が見られた。これらの結果から、植生と土壌の物理環境、および斜面の土壌移動量の関係につい て考察した。 |
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壮齢照葉樹二次林における主要構成種の生育初期段階の更新過程
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井藤宏香
(鹿大農) 伊藤 哲 中尾登志雄 |
我々は、これまで宮崎大学田野演習林の壮齢照葉樹二次林において微地形に着目した樹木の分布と動態に関する研究を報告してきた。その結果、種によって微地形に対応 した生育適地を持っており、また稚樹から高木層までの生育段階に沿って生育適地の選択が変化することが明らかになった。しかし、稚樹の分布は微地形よりも種子散布 様式や母樹の存在が影響していることが示唆された。散布種子から稚樹までの生育初期段階の個体分布と更新動態はその後の分布に大きく影響していると考えられるた め、散布種子、実生および稚樹の各ステージにおける微地形ごとの個体分布と次期ステージに移行するまでの枯死率を明らかにし、それらの規定要因を検討する必要があ る。そこで本研究では、種子散布様式の異なる主要構成種5種を対象に、種子散布、実生(樹高<30cm)および稚樹(樹高>=30cm)の分布の調査を行い、生育初期段階の更 新過程を検討したので報告する。 |
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絶滅危惧種ノカイドウの結実
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石橋千晶
(宮大農) 中尾登志雄 |
ノカイドウは、えびの高原周辺にのみ自生するバラ科リンゴ属の落葉小高木である。レッドデータブック(環境省)では絶滅危惧IA類に分類されており、近年急激に個体数が減少し、野生での絶滅の危険性が高くなっている。その対策として稚樹の保護、遺伝資源の現地外保存としての苗木の生産などを行っている。 また、繁殖に関する研究は遺伝資源の保全を考える上で重要であると考える。しかし、一般にリンゴ属は自家不和合性が強く、他家受精によって結実するといわれているものの、ノカイドウにおける結実性や自家不和合性に関する研究は行われていない。 そこで今回、ノカイドウの自家不和合性・和合性の確認のために袋掛けを行ったところ、自家結実性と考えられる結果が得られたので、その報告をする。 |