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クロマツ皮層樹脂道の形質とマツノザイセンチュウの移動
−皮層樹脂道の個体内差− |
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川口エリ子
(鹿児島県林試) |
演者はこれまでに、クロマツの切り枝を用いた実験を行い、皮層樹脂道の断面積が小さい切り枝ほどマツノザイセンチュウの移動が抑制されていることから、皮層樹脂道の形質がマツ材線虫病抵抗性の指標になる可能性を示唆している。しかし、研究例が少ないため、皮層樹脂道と線虫の移動に関しての実験を繰り返し行う必要がある。また、抵抗性の指標として利用するには、樹脂道形質の個体内でのばらつきが小さいことが必要であるが、個体内でのばらつきについての報告はない。そこで今回、樹脂道と線虫の移動との関係を調べるとともに、枝が伸びている方位や枝齢などが異なる枝の皮層樹脂道形質を測定し、個体内でのばらつきを調べた。 |
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クロマツにおけるマツ材線虫病抵抗性とマツノザイセンチュウの移動との関係
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森 康浩
(福岡県森林研セ) 宮原文彦 堤 祐司 近藤隆一郎 |
マツ材線虫病抵抗性の苗木生産が行われるようになって久しいが、抵抗性メカニズムは未解明のままで根本的解決には至っていない。そこで、本研究では抵抗性の要因を探るため、マツノザイセンチュウの樹体内での移動性の観点から検討した。抵抗性と感受性を評価したクロマツから、それぞれ長さ21cmの切り枝を採取し、水挿し3日後に、マツノザイセンチュウKa-4を5000頭接種した。28℃、14h日長の条件下でインキュベートし、接種6日後に接種点付近と接種点から下方へ9cm離れた部位から長さ3cmのセグメントを採取し、抵抗性と感受性との間で線虫の分布を比較した。その結果、接種点付近の樹皮では、抵抗性と感受性で線虫数に差がなかったが、接種点から9cm離れた部位の樹皮では、抵抗性の線虫数は感受性に比べて有意に少なかった。この結果から、抵抗性の切り枝では線虫の垂直方向への移動が妨げられていると考えられた。 |
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Real-time PCR法を用いた抵抗性クロマツ16クローン枝のマツノザイセンチュウ分布特性の評価
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能勢美峰
(九大生資環学府) 白石 進 宮原文彦 大平峰子 |
マツ材線虫病抵抗性マツと感受性マツでは、樹体内でのマツノザイセンチュウ(以下、線虫)の移動や増殖に違いがあることが知られている。また、同一樹種(アカマツ)で、枝を通過するマツノザイセンチュウの数は個体によって差がみられることが報告されており、これは個体間の抵抗性による違いによるものだと考えられている。西日本より選抜されたマツ材線虫病抵抗性クロマツ16クローン実生苗の抵抗性の程度には家系間差があり、16クローン間でも同様に樹体内での線虫の移動や増殖に差が見られると推定されている。そこで今回、抵抗性クロマツ16クローンと感受性クロマツ4クローンの切り枝に線虫接種を行い、クローン間の移動・増殖特性を調査する。接種3日後と6日後に凍結乾燥させ、木部と樹皮についてそれぞれの線虫頭数を調査する。その方法として、テンプレートDNAとなる線虫DNAの量から線虫頭数を推定するReal-timePCR法を用いた。 |