504
クロカミキリから分離した線虫のマツ苗木への接種試験
田中一二三
(海ノ中道海浜公園)
玉泉幸一郎
マツの樹体内に侵入したマツノザイセンチュウは少なくとも2年間以上にわたり根系内で生存しており、マツ材線虫病の病原となる可能性を示した。しかし、これら根系に生存するマツノザイセンチュウが病原となるためには、カミキリにより他の個体に運搬されることが必要である。根系から羽化脱出するカミキリの中でクロカミキリはその数が非常に多い。そこで、本研究では、クロカミキリに注目し、このカミキリがマツノザイセンチュウを運搬する可能性はないか、また、運搬される線虫に病原性はないかについて検討した。海ノ中道海浜公園内においてマツ材線虫病で枯死したクロマツ4本を対象とし、これらの根系から羽化するクロカミキリを捕獲し、線虫の分離を行なった。分離した線虫は形態観察した後、増殖を行ない、マツ苗木への接種試験を行なった。


505
マツノマダラカミキリ終齢幼虫の低温期間と蛹化・羽化までの期間
吉田成章
竹谷昭彦
遠田(1975)はマツノマダラカミキリの終齢幼虫を 冬期に加温する実験を行い、加温をはじめた時期と蛹化までの日数の関係は季節 が進むにつれて日数は短かくなっていることを明らかにしている。また、森本 (1977)も同様の実験結果を報告しているが、これらの実験では、野外での温度 条件が明らかでなく、供試個体数が少なかったり加温の間隔が一定でなかったり している。そこで、より実験的な飼育試験によりその関係を再確認する目的で、 熊本県芦北町湯浦の被害材から1980年11月に採取した幼虫を8℃の恒温室で保存 し、約10日おきに約40頭の幼虫を20℃の恒温槽に移して飼育し、蛹化、羽化を記 録した。結果、8℃での保存期間が長くなるにつれて蛹化・羽化までの日数は短 かくなり、森本、遠田の結果を再現することができた。このことにより、マツノ マダラカミキリ幼虫の休眠および覚醒に関係する生理要因を解析するための知見 をえた。


506
桜島におけるMEP-MC剤の空中散布によるマツノマダラカミキリの防除効果
中野寛之
(鹿大農)
永野真一朗
曽根晃一
森田 茂
畑 邦彦
北海道を除く日本列島全域でマツ材線虫病によるマツの集団枯損が問題となっている。鹿児島県桜島でも、1995年ごろから被害がみられ、2000年以降、全島に拡大してきている。現在桜島では、被害拡大防止対策として被害材の伐倒後の燻蒸処理に加え、2004年度から国立公園内の第U種保護地域のクロマツ林にMEP-MC剤の空中散布が行われている。  これまで、野外でのマツノマダラカミキリ(以下、カミキリ)への空中散布の効果は明らかにはされていなかったが、2004年度に生捕り型に改良した誘引トラップを用いたカミキリの捕獲調査をMEP-MC剤散布地外で行った際に、捕獲されたカミキリの死亡個体からMEPの成分が検出されたことにより、野外でのカミキリに対する薬剤の有効性が明らかになった。そこで2005年度は、MEP-MC剤散布地内にも同様のトラップを設置し、MEP-MC剤のカミキリへの影響を散布地内外で調査した。その結果、散布地内でのMEP-MC剤の効果は高いことが示唆された。


507
長崎県におけるマツノマダラカミキリ発生予察の情報システム
吉本貴久雄
(長崎県林試)
松くい虫防除薬剤散布時期の決定のため、マツノマダラカミキリの発生予察は毎年行われている。県内を500mメッシュに区画し、その区画内の気象データによる初発日を区画毎に予測しインターネット(長崎県農林業情報システム)により閲覧できるようにした。その概要を報告する。