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暗視カメラによるシカの行動観察(T)   
高宮立身
 (大分県林試)
室 雅道
 林業試験場及び周辺に生息する野生シカを対象に、平成17年度から暗視カメラによる観察を行っている。 今回は昨年9月から今年2月までの期間、暗視カメラがとらえた映像から場内シカの個体群及び行動について報告する。


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スズタケの有無がニホンジカの天然林利用に与える影響
村田育恵
 (九大生資環学府)
矢部恒晶
田代直明
内海泰弘
榎木 勉
井上 晋
近年,九州山地に位置する九州大学宮崎演習林では林床に密生していたスズタケがニホンジカ(シカ)の摂食により急速に減少している。森林の更新に対するシカの影響を明らかにするためには,有力な餌資源であるスズタケの有無とシカの行動との関係を知る必要がある。そこで,スズタケが残る天然林(有区)と消滅した天然林(無区)内に1m2の方形区を200個設置し,糞粒数とスズタケの生存稈数からシカの利用頻度について検討した。平均糞粒密度(個/m2)は有区で4.71,無区で0.39と有区で多く,調査地域においてスズタケが消滅した天然林ではシカの利用が少ない傾向が見られた。有区ではスズタケの摂食が確認され,生存稈数は尾根部、谷部で少なかった。尾根部には寝跡やシカ道が,谷部には沢があり,双方とも移動経路として利用が多く,同時に摂食にも利用されると考えられた。また,生存稈数の多い場所と少ない場所の境界は明瞭であり,境界付近から摂食する可能性が示唆された。


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森林性野ネズミの貯食活動に影響を与える諸要因
中村麻美
 (鹿大農)
曽根晃一
高松希望
平田令子
渕上未来
畑 邦彦
 森林性野ネズミの貯食活動は、樹木の種子分散に非常に重要な役割を果たしており、貯食活動に対する影響を明らかにすることは、広葉樹林の動態の解明と管理上の指針を得る上で大変重要である。そこで、1994年から2005年にかけて行われたドングリ生産量、野ネズミの定住個体数、発信機付ドングリの運搬追跡調査の結果から、野ネズミの貯食活動に影響を与えている環境要因を明らかにし、その働きを考察した。その結果、ドングリ生産量と野ネズミ定住個体数、そして地形などの環境要因は、複雑に相互に絡み合って定住個体一個体あたりのドングリ量、定住個体の行動圏のサイズや位置、ドングリの運搬距離や方向を決定し、ドングリの貯食率や回収率、発芽・定着率などに影響を及ぼしていると考えられた。