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沖縄ヤンバル地域における自動撮影モニタリング:西銘岳におけるマングースの記録事例について
小高信彦
(森林総研九州)
外山雅大
嵩原建二
佐藤大樹
沖縄島北部ヤンバル地域の亜熱帯照葉樹林において、自動撮影装置による調査を実施した結果、西銘岳山頂から南西約900mの林内に設置した自動撮影装置に、2006年5月17日5時50分から51分の間に3回、同一個体と思われるマングースが撮影された。なお、この調査地点では、2006年2月19日から7月5日までの撮影期間(130日)に、環境省レッドリストIA類のノグチゲラ(3回)、IB類のヤンバルクイナ(14回)、ホントウアカヒゲ(2回)、ケナガネズミ(4回)が撮影された。4年後の2010年は、渡瀬によって1910年に沖縄島にマングースが導入されて、100周年の節目を迎える。ヤンバル地域のなかでも、固有種、希少種の最も重要な生息地の一つである西銘岳地域において、マングースが記録されたことは深刻である。今後、ヤンバル地域におけるさらなる外来種対策と並行して、在来種への影響に関する調査の強化が望まれる。


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野生動物生息状況調査における給餌の効果
曽根晃一
(鹿大農)
細川 歩
田中聡子
川畑洋介
平田令子
畑 邦彦
日本各地で実施されている多くの野生動物の生息状況調査に、赤外線センサースウィッチが装着された自動撮影装置が利用されている。その際、カメラは獣道や糞、食痕などのフィールドサインが多く残る場所に設置され、撮影効率をより高めるために、カメラの前に餌を設置することもある。しかしながら、給餌が調査結果に影響を及ぼすことが予想される。そこで、2004年7月から2006年6月まで鹿児島県大隅半島の「大隅半島緑の回廊」(錦江町、肝付町)内の6林分に赤外線センサースウィッチ付きカメラを設置し、野生動物の撮影を行った。2004年7月から2005年7月にかけては、カメラの前にヒマワリの種子、マテバシイのドングリ、ドッグフードを設置したが、2005年7月以降は設置しなかった。餌を設置した場合と設置しなかった場合には、撮影されたほ乳類の種数、撮影枚数に差がみられた。差は広葉樹林よりスギ人工林の方が大きかった。


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与那国島におけるアカヒゲの非繁殖期の生息状況
関 伸一
 (森林総研九州)
アカヒゲは南西諸島北部と男女群島でのみ繁殖する日本の固有種である。北部のトカ ラ列島の繁殖集団は夏鳥であることが知られているが,その渡りの経路や越冬地につ いてはわずかな報告しかない。本講演では,2005年10月12日〜18日に調査した,先島 諸島・与那国島におけるアカヒゲの秋期の生息状況について報告する。調査では,島 内に任意に選定した観察点において,まず約2分間定点観察行い,次にアカヒゲのさ えずりの再生音への鳴き返しの有無を3分間記録する方法を用いた。観察点は島内各 地の森林周辺とし,さえずりの再生にはトカラ列島でMD録音した音声を使用した。 調査した地点の内,44.0%でアカヒゲの姿,さえずり,または地鳴きを確認した。ア カヒゲの生息密度が高い地域は,森林が分布する場所の中でも島の南側に限られた。 この地方では秋以降に北東の季節風が卓越するため,島の脊梁山地よりも風下側の森 林で生息密度が高いのではないかと考えられた。