701
インドネシア東部ジャワ州に植栽した実生採種林の諸形質の遺伝率
千吉良 治
(林木育種センター西表育種園)
松根健二
小川 靖
栗延 晋
 近年の森林認証制度への取り組みの活発化等に伴い,日本での消費量が増えつつある,東南アジア原産の早生樹種 Paraserianthes falcataria について,インドネシアのジャワ島中部と東部から収 集した種子由来の自然受粉60家系を用いて,東部ジャワ州に設定した実生採種林の植栽2年目までの調査結果を取りまとめた。調査形質は樹高,胸高直径,枝下高及び主幹の通直性の4形質で,植栽2年目の調査ではピロディンの主幹胸高部位への陥入量を調査形質に加えた。植栽1年目の狭義の遺伝率は,樹高,胸高直径,枝下高,及び主幹の通直性の順に0.075,0.041,0.078,0.063で,樹高及び胸高直径の平均値はそれぞれ442cm,5.1cmであった。これらの結果から,家系選抜などを行うことで,諸形質の遺伝的な改良を行えることが示唆された。なおこの研究は環境省の地球環境研究総合推進費によって行われている。


702
植栽15ヶ月目までのParaserianthes falcataria の諸形質の産地間差
小川 靖
(林木育種センター西表育種園)
松根健二
千吉良 治
栗延 晋
 熱帯地域における早生樹を用いた森林造成において、産地選択による早生樹苗の遺伝的強化を目的とし、インドネシア東ジャワ州に9産地のParaserianthes falcataria (L.) Nielsen を用いて産地試験地 を設定した。試験は植栽密度を1次因子、産地を2次因子とする分割区法により計画した。樹高、胸高直径、枝下高および通直性の4形質を植栽9ヶ月目および15ヶ月目に測定した結果、通直性には9ヶ月目の測定から、胸高直径には15ヶ月目の測定から有意な産地間差が認められた。また、枝下高には9ヶ月目の測定から植栽密度による差が認められた。これらから、産地選択による苗の遺伝的強化は可能であると考えられた。なお本研究は環境省地球環境研究総合推進費、戦略的研究プロジェクトの一環として実施した。


703
鹿児島県におけるスギ精英樹次代検定林の解析結果について
小山孝雄
(鹿児島県林試)
鹿児島県では精英樹の特性を明らかにするために,昭和44年度からスギ精英樹の クローン検定林を造成し,成長量調査を行ってきた。平成17年度末現在で,16箇所の スギ次代検定林において30年次調査が終了しており,精英樹の成長特性に関する基礎 データが集積されてきている。そこで今回は,スギ30年生次の樹高および胸高直径の データを用いて,検定林間差,精英樹間差,精英樹と検定林間差(交互作用)につい て解析を行ったので,その結果について報告する。