711
抵抗性クロマツ交配家系におけるマツノザイセンチュウ接種後の枯損パターンについて
倉本哲嗣
(林木育種センター九州)
松永孝治
大平峰子
平岡裕一郎
谷口 亨
岡村政則
星 比呂志
藤澤義武   
マツノザイセンチュウ抵抗性育種を進める上で,接種検定後どのようにマツが枯れていくのかを明らかにすることは,枯損のメカニズムを解明する上で重要である。これまでに,抵抗性クロマツ3×3のフルダイアレル家系に対して平成16年および17年の2回接種検定を行ったが,生存率に年次間差がなかった。一方,田辺ク-54を母樹として,三崎ク-90ならびに波方ク-37を花粉親とした2交配家系では,接種後病徴発症から枯死に至る日数が異なることを示している。これは,各抵抗性クロマツの持つ抵抗性に関する遺伝的な要因を反映していると推測された。そこで,抵抗性クロマツ3×3のフルダイアレル家系に対して平成16年から18年の3回行った接種検定結果をもとに,家系によって枯損経過に差があるか検討した。また,接種年によって各家系の枯損経過に差があるか検討した。


712
マツノザイセンチュウを人工接種した抵抗性マツ2年生苗における線虫数の変動
松永孝治
(林木育種センター九州)
倉本哲嗣
大平峰子
倉原雄二
星 比呂志
マツ材線虫病は日本のマツ林に深刻な被害を与えており、これに対し、林棒育種センターでは抵抗性マツの品種開発を進めている。この抵抗性マツの効果的な品種開発には、マツが持つ抵抗性の遺伝様式を明らかにすることが重要である。そのため、これまでに生存率の年次変動について調査を行い、抵抗性マツの遺伝様式に関する基礎的な情報を蓄積してきた。しかし、より詳細に遺伝様式を解明するためには、マツ材線虫病の発症に関する様々な調査、例えば樹脂道形質、組織学的反応、そしてマツ個体内における線虫の分散・増殖などの調査が必要と考えられる。そこで今回は、マツノザイセンチュウを接種した抵抗性クロマツおよび抵抗性アカマツの交配家系、ならびに抵抗性クロマツと抵抗性アカマツの種間雑種に対し、定期的に個体内の線虫数の調査を行い、樹種間および家系間での線虫数の差異などについて検討した。


713
リュウキュウマツ材線虫病の激害地産自然交配家系の接種検定結果
中平康子
(沖縄県森林資源研)
倉本哲嗣
沖縄県では、リュウキュウマツの抵抗性個体の選抜育種をすすめており、線虫接種検定による生残木や激害林における生残木を候補木として選抜している。現在、これらの候補木から得た自然交配家系に対して線虫接種検定を行っている。 今回はより多様性を考慮し、より多くの抵抗性候補木を選ぶための基礎情報を得る目的で、激害地での生存木から得た自然交配家系に対して接種検定を行い、その生存率等について検討した。


714
抵抗性クロマツの挿し木増殖における挿し穂の採取部位および低温貯蔵の検討
山田康裕
(大分県林試)
真崎修一
宮崎潤二
佐々木義則
発表要旨:抵抗性クロマツの挿し木増殖における挿し穂の大量生産と発根率の向上を目的として、挿し穂の採取部位および低温貯蔵が発根性に与える影響を調査した。穂先から5cmの位置と、その位置からさらに5cm下部の2箇所を剪定ばさみで切断し、その先端部を天挿し用、基部を管挿し用として挿し木を行った結果、管挿しは天挿しと比較して発根率の向上がみられた。また、穂木を1ヶ月間4℃で低温貯蔵を行った結果、発根率が向上する傾向が見られた。しかしながら、管挿しの穂は全く伸長していなかったことから、抵抗性クロマツ苗を挿し木増殖によって事業的に生産する場合、養苗期間が長くなるといった問題が出てくるものと思われた。