204
過去の土地利用図の作成と現在の森林植生
小田三保
(宮崎県
林技セ)
福里和朗
三樹陽一郎
 近年、全国各地で広葉樹林化の研究が行われている。宮崎県においても、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発」の中で、ランドスケープレベルにおける広葉樹林化の適地判定技術の開発に取り組んでいる。また、森林環境税の導入を契機に、広葉樹林化等による公益的機能の向上が期待されている。これまで皆伐跡地の植生調査等により、高木性広葉樹が早期に侵入・定着する要因として、現植生以前の土地利用状況があげられており、過去の土地利用状況を把握することが重要である。そこで今回は、広葉樹林化の適地判定の一環として、明治時代の5万分の1地形図から過去の土地利用図を作成するとともに、現在の森林植生を調査したので報告する。


205
九州全域における再造林放棄地の植生回復状況とその要因
長島啓子
(九大農院)
吉田茂二郎
保坂武宣
村上拓彦
 我が国の林業を取り巻く情勢が厳しさを増す中,皆伐後に再造林されない再造林放棄地が増加している.植生が回復しない場合,これらの放棄地の増加は,水土保全機能の低下やそれに伴う土砂流出災害の危険性があるとして危惧されている.
我々の研究グループは,2004年度より九州全域にわたって再造林放棄地の分布状況とその植生回復状況を調査してきた.本報告では,クラスター分析を用いて九州全域における再造林放棄地の植生回復状況を把握するとともに,回復状況の違いを規定する要因をDCA及び決定木分析を用いて検討した.クラスター分析の結果,植生は草本優占・木本侵入・樹冠層非先駆性優占・樹冠層低木層非先駆性優占・樹冠層先駆性優占・樹冠層低木層先駆性優占の6群に分類された.DCAの結果,シカ食害,放棄年数,隣接広葉樹の有無が規定要因として抽出され,特に決定木分析では木本樹種の侵入を規定する要因がシカの食害の程度であることがわかった.


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オブジェクトベース分類を用いたスギ・ヒノキ林の分類
齋藤英樹
鹿又秀聡
山田茂樹
 本研究は、画像解析ソフトウェアENVIに採用されているオブジェクトベース分類手法を、球磨地方の人工林地帯に適用し森林分類図を作成することを目的としている。解析の結果、分類精度には、オブジェクトベース分類とピクセルベース分類の間に大きな差は見られなかった。しかし、注目している林分が他の林分と分離されているか確認しながらセグメント化を行い、セグメント化されたオブジェクトごとにラベル付けを行って、それらを分類するのに最も有利なスペクトル統計量やテクスチャ情報を用いて分類を行うことから解析過程において解析者の知見を有効に利用することが容易である。このことから目的とする森林分類図の作成がより容易であることが明らかとなった。一方で、こうしたメリットを生かすためには、地上の林分状況の状況が空中写真等によってある程度明らかになっており、また衛星画像の判読に関する知識や技術が必要であることが明らかとなった。