213
スギ高齢林における間伐強度の違いが成長に及ぼす影響
鈴木寿仁
(鹿大農院)
竹内郁雄
寺岡行雄
吉田茂二郎
 鹿児島県轟木国有林内にある林齢100年生スギ人工林で、間伐強度を強度、中度、弱度及び無間伐に設定されている間伐試験地において成長量の違いを検討した。プロットの設定は1977年(林齢70年)で、林齢90年生までの20年間の間伐効果の検討は既に報告されている。その後、90年生で本数間伐率で強度・中度・弱度の順に19.3、14.5、12.6%の間伐が行われ、100年生までの10年間の成長量の検討を行った。個体の定期平均直径成長量は間伐が強度ほど大きくなる傾向がみられた。定期平均幹材積成長量は全てのプロットで15m3/ha/yr以上を示した。定期平均成長率は間伐が強度になるほど大きかった。スギ高齢林においても、間伐効果がみられ間伐が強度であるほど成長量が大きかった。


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コナラ萌芽林の幼〜壮齢期(33成長期間)における成長と林分構造の動態
甲斐重貴
(宮大農)
黒木宏輔
 1975年、コナラ天然生萌芽林内に萌芽整理を行った固定プロットを設定し、観察と調査を続けてきた。2007年12月〜2008年1月、第5回目(41〜43年生)の調査を行った。株や幹の生残率はほとんどのプロットが20%以下で、多くが10%以下であった。林分平均胸高直径及び林分平均樹高は、年数の経過ともに増加した。41~43年生時の林分平均胸高直径は12.9cm〜13.9cm、林分平均樹高は9.6m〜10.1mで、人工林の場合に比べて林分平均胸高直径はやや小さい程度であったが、林分平均樹高は大幅に小さかった。また、林分幹材積は99.85m?/ha〜168.46 m?/haで、人工林の場合と比べて小さく、主に本数の減少により第4回測定時(1999年、33〜35年生)の値に比べてやや低下したプロットもみられた。萌芽整理と生残率及び成長量との関係は特に認められなかった。萌芽林内には常緑樹の侵入がみられ、1999年以降増加し、遷移の進行がうかがわれた。


215
ヤンバル地域亜熱帯性二次林における地形因子を用いた林分構造推定モデル
玉城雅範
(九大生資)
高嶋敦史
吉田茂二郎
溝上 展也
 沖縄島北部の亜熱帯性二次林では,数多くの固有種が存在し複雑な生態系が成り立っている。一方で,現在も林業活動が実施されており,今後,生態系への負担を軽減するためにも集約的な木材生産システムが求められている。集約的な木材生産システムを検討するためには,林地特性の把握が必要であるが本地域では十分な検討がなされていない。そこで本研究では,説明変数に標高,傾斜,平均勾配,有効起伏量,露出度の5つの指標,従属変数にha当り本数,断面積合計,材積,プロット毎の上位大径木2〜5本の平均直径,平均樹高の5つの指標を用いて地形が林分構造に与える影響について把握した。その結果,特に標高,有効起伏量,露出度が林分構造に影響していることが明らかになった。これにより,本地域で集約的な木材生産システムを確立していく上で地形を考慮することは有効であることが示された。


216
ヤクスギ天然林における年輪年代学的研究
川添陽平
(九大生資環)
吉田茂二郎
高嶋敦史
加治佐剛
溝上展也
 ヤクスギ天然林は縄文杉に代表される樹齢1000年以上の老齢なスギ(ヤクスギ)が出現する天然生林であり、対象地である白谷は照葉樹林からヤクスギ林への移行帯にあたりヒメシャラやハリギリなどの落葉樹の高木が点在するものの、基本的には常緑樹の森であるといわれている。本研究の目的は、白谷試験地において個体の経年変化把握が可能な年輪年代学的手法を利用し過去数百年におよぶ林分動態を解明することである。試験地は、0.8haであり80個体の伐根と24個体の倒木が存在する。その内、伐根73個体と倒木24個体からコアサンプルが採取できた。解析の結果、白谷試験地は他の試験地とは異なり、最外層年代に傾向がみられなかった。そこで白谷試験地の特異性を検討した。この結果を基に林分動態が明らかになっている他の島内の3試験地と着生年や伐採年・枯死年を比較した。