316
暖温帯山地河畔域におけるハルニレ個体群の齢構造と更新動態
佐藤妙
(宮大農)
伊藤哲
井藤宏香
宗円典久
 低地暖温帯の河畔林は劣化・改変が著しく、その保全・修復技術の確立が急がれる。ハルニレは暖温帯の河畔林を特徴付けるニレ科樹種の1つである。演者らは、これまでの研究で、暖温帯の山地河畔域の林分構造とハルニレ個体群の構造を調査し、1)ハルニレは若齢林分では林冠を構成するが、比較的発達した林分では常緑樹と混成し、流路および林道付近に多く認められること、2)常緑樹林帯の河畔林では、ハルニレ個体群は基本的に光環境の良い場所に成立しており、河道周辺の堆積面が好適な立地であること、3)人為攪乱がハルニレの更新・維持において有利に作用していること、を報告してきた。本研究では、ハルニレ個体群の齢構成を調査し、その結果に基づいてハルニレ個体群の更新動態に及ぼす地形と人為攪乱の影響を検証する。


317
一ッ瀬川上流部における水辺林構成種の広域分布
宗円典久
(宮大農)
佐藤妙
伊藤哲
光田靖
 水辺林構成種の広域にわたる分布を把握し、これに影響する要因を標高および地形構造に着目し明らかにすることを目的とした。調査対象は一ッ瀬川上流部、標高約1300m〜約200mの流路沿いで、冷温帯〜暖温帯を含む。GPSを用いて、流路から確認できるサワグルミ、カツラ、シオジ、ハルニレの個体位置を測定した。得られた個体位置データをGIS上で標高および地形データと重ね合わせ、各樹種の分布と標高および地形要因との関係を解析した。サワグルミおよびシオジは高標高の比較的小規模な流路沿いに分布していたことから、これらの樹種のハビタットは冷温帯の河川源頭部に限定されると考えられた。カツラは低標高の暖温帯まで分布し、また急流河川に多くみられた。ハルニレは下流側の暖温帯に分布しており、温度環境だけでなく河川規模の違いによる撹乱タイプの違いが分布に影響している可能性が示唆された。


318
九州南部の丘陵地帯における過去100年間の里山景観の変化
伊藤哲
山川博美
山口絵里香
宗円典久
藤掛一郎
 2001年から2005年に実施された国連ミレニアム生態系評価を受けて、わが国でも2007年から里山里海をテーマとしたサブグローバル評価の実施準備進められている。開発や過剰利用によって生態系サービスが劣化してきている中で、里山域の生態系サービスの変化の実態の評価や変化要因の分析は、持続的な社会を実現するための重要な支援情報を提供する。本研究では、里山の生態系サービスの変化を評価するための基礎情報を得る目的で、宮崎県高岡町の丘陵地帯を対象に、地形図と航空写真の判読によって明治期および現在の土地被覆を図化し、景観構造の長期的な変遷を調べた。明治期おおび現在のいずれの土地被覆も強い地形依存性が認められた。また明治から現在までに草地・荒地および針広混交林分が減少し、針葉樹林が増加していた。これらの結果を基に、景観構造の変化に伴う生態系サービスの変化を考察する。