411
スギ幹の肥大成長の季節変動と経年変動
玉泉幸一郎
(九大農院)
 地球温暖化は植物の温度反応を通じて、その成長量や成長パターンに影響を及ぼすと予想されている。それらの影響を予測するためには、温度変化に対する植物の成長反応を明らかにする必要がある。本研究ではスギを対象とし、幹の肥大成長の温度反応を明らかにすることを目的とした。 15年生スギの幹に装着したデンドロメーターにより、5年間の幹の肥大成長を測定した。5年間の幹の肥大成長パターンから温度に対する反応をモデル化することを試みた。


412
スギ一次枝の呼吸推定モデルの構築
沖井英里香
(九大院農)
玉泉幸一郎
 温暖化による温度上昇は植物の呼吸量に大きな影響を与え、ひいては炭素固定機能を低下させる可能性がある。温暖化の炭素固定機能に及ぼす影響を評価するためには、呼吸の温度反応をモデル化することが重要である。筆者らは、冬季におけるスギ主幹の呼吸速度(維持呼吸)は部位毎の年間成長量と関連しており、その呼吸速度(維持呼吸)は部位毎の年間成長速度を変数としたモデル式であらわせることを示した。そこで、本研究においては、同様のモデル式がスギの一次枝の呼吸速度においても適用できるかどうかについて検討した。15年生のスギの一次枝に呼吸箱を数個ずつ設置し、成長休止期における呼吸速度を測定した。これらの呼吸速度を成長量を変数としたモデル式で表す試みを行った。


413
4年生スギ林における土壌呼吸の変動要因
佐々木絢子
(九大生資環)
玉泉幸一郎
 土壌呼吸は、森林生態系から大気へのCO2放出の50〜95%を占めており、地球規模の炭素循環の重要な要素である。この土壌呼吸に影響を及ぼす因子として、地温、土壌水分、さらには植物の成長速度などが報告されている。よって、精度の高い土壌呼吸の推定を行うためには、これら因子の寄与度を明らかにする必要がある。今回の研究では、土壌水分をコントロールした4年生スギ林において、土壌呼吸に対する地温、土壌水分、成長量の影響を評価することを目的とした。土壌呼吸は、灌水区と無灌水区の各処理区6ヶ所で測定し、地温は土壌呼吸の各測定点で、また、土壌水分は灌水区3点、無灌水区4点で測定した。成長量測定は、各区4本を使用した。得られた結果より、各水分処理区間での土壌呼吸の平均速度を求め、地温、土壌水分、成長量との関係を解析した。


414
スギ針葉の採取位置とスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)様活性
三樹陽一郎
(宮崎県
林業技術セ)
福里和朗
小田三保
讃井孝義
齋藤真由美
 植物は種々のストレス(強光、紫外線、乾燥、重金属等)を受けると、活性酸素種(AOS)による酸化ストレスが上昇する。これに対応するため植物体内では活性酸素消去物質が生成されるが、中でもスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)様活性物質はAOSの最も上流での消去物質として作用することが知られている。この活性酸素消去機能に基づき、スギ針葉の酸化ストレスを把握する手段の一つとしてSOD様活性の測定が考えられるが、樹冠の位置によって光条件が異なるため、針葉の採取位置が及ぼす影響を把握しておく必要がある。そこで、樹冠における採取位置、針葉の生育状態の違いによるSOD様活性について比較検討した。