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シダレザクラとソメイヨシノの葉における水分特性の比較
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作田耕太郎 (九大農) 陶山健一郎 |
発表者らは,枝垂れ性樹木の特徴的な樹形が葉の生理的特性に及ぼす影響についての調査を行っており,シダレザクラの樹冠内光環境の特異性,葉内クロロフィル濃度と光環境との関係性の弱さ,また光合成や蒸散速度および木部圧ポテンシャルの日変化が非常に特異的であることなどを明らかにしてきた.一連の研究を通じて,枝垂れによる樹形の特異性は,樹体や個葉の水分特性にも影響を及ぼす可能性が考えられた.本研究では,九州大学農学部構内および熊本県立大学構内に植栽されたシダレザクラとソメイヨシノを材料とし,それぞれの個葉のP-V曲線を作成することから,膨圧を損失するときの木部圧ポテンシャルや相対含水率などの水分特性について,樹種間での比較を行った. |
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葉緑素計(SPAD-502)によるシダレザクラとソメイヨシノの葉におけるクロロフィル濃度の計測
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陶山健一郎 (九大農) 作田耕太郎 |
葉緑素計(SPAD-502)は簡便、迅速にSPAD値を計測する測定器である.SPAD値とは,葉内クロロフィル濃度(以下Chl濃度)と正の直線関係を示す指数であるが,測定対象とする葉の特性によって直線の傾きや相関が異なり,樹種間で比較するには抽出―分光法などでの測定値との検定が必要となる.発表者らはこれまでに,枝垂れ性樹木の特徴的な樹形が葉の生理的特性に及ぼす影響について調査を行っており,シダレザクラのChl濃度と光環境との関係性の弱さについて指摘した.しかし,晩夏のみの調査結果であったことから,年間を通しての測定によって検証する必要があると考えた.本研究では,シダレザクラとソメイヨシノのChl濃度について,葉緑素計および抽出―分光法での計測を着葉期間中に複数回同時に行い,サクラ類におけるSPAD値の特性評価とシダレザクラのChl濃度を決定する因子について検討することを目的とした. |
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大面積皆伐地に植栽された苗木の生理特性
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香山雅純 (森林総研九州) 前田勇平 田中浩 |
熊本県球磨村の権現山山麓のスギ人工林では、2002年までに95haもの大面積のスギ林において皆伐が実施され、長期間再造林が放棄された。しかし、2006年3月から熊本県が「水とみどりの森づくり税」を利用して、アカマツ・エゴノキ・エノキ・タブノキ・ヒサカキの苗を植栽した。2007年に苗木の生育調査を行い、立地に違いによって各樹種の成長が大きく異なっていた。具体的には、エゴノキ、エノキは土壌が肥沃な地域で特に成長が良いが、礫が多い貧栄養な地域では成長が悪かった。一方、アカマツ、タブノキ、ヒサカキは貧栄養な地域でも順調に生育していた。本研究では各樹種の生育状況をさらに細かく検討するため、土壌の肥沃な地域と貧栄養な地域にて、土壌の養分状態、光合成特性、水利用特性、樹木の養分吸収特性を樹種ごとに比較し、生育特性を検討した。 |
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スギ葉枯症状発生個体の樹冠における枯死シュートの分布
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重永英年 (森林総研九州) 今矢明宏 前田勇平 |
葉枯症状を示すスギ個体について、樹冠内の異なる位置から一次枝を採取し、二次枝シュートの枯死状況を調べた。健全個体では、齢階が4年から5年にかけての一次枝軸まで二次枝シュートが着生していた。一方、症状発生個体では、齢階が1年から2年の一次枝軸から発生する二次枝シュートで先端部の枯れが発生し、齢階が3年の一次枝軸では着生する二次枝シュート先端のほぼ全てが枯れているものもあった。このような症状は、個体頂端から約2mの範囲の樹冠上部で顕著であり、それ以下の樹冠位置ではほぼ観察されなかった。一次枝の伸長量は樹冠先端部の枝で最も大きく、個体頂端から約2m下方にかけて大きく減少し、それ以下では一定となるという変化を示す。一次枝の伸長が盛んな部位で葉枯症状が顕著となることが予想された。本発表では、葉の変色症状の季節変化に関して、定点観測の結果についても報告する。 |