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帯状択伐林における鳥類多様性
松本純
(九大生資環)
溝上展也
吉田茂二郎
 近年、持続的な森林経営のために生物多様性の保全が求められている。その中で人工林は日本の森林面積の4割を占めるため、保全の観点からも無視することはできない。しかし、その多くが一斉皆伐による単一種の同齢林分であり、人工林での生物多様性の低下が懸念されている。この手法に代わる持続的経営林として、複層林施業である帯状択伐が推進されている。この施業は植生が豊富であるという報告もあり、生物多様性の保全効果も期待される。そこで本研究では帯状択伐林の鳥類多様性の評価を行った。2008年5-7月に大分県民の森および大分県九州林産社有林における伐採林にて、ポイントセンサス法を用いて調査を行った。帯状択伐林は一斉林と比較して確認種数、個体数ともに多い傾向が見られた。また、確認された種において帯状択伐では一斉林よりも多様な採食基質をもつ種が見られた。


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カメラトラップ法で記録される森林性鳥類の種組成の特徴
関伸一
(森林総研九州)
 森林性鳥類の生息数や群集構造の調査では姿と声の直接観察に依存した簡便な手法が広く用いられている.しかし,林床の藪を好むあまり鳴かない種では直接観察での記録効率が低く,鳥類群集の網羅的な調査を行うにはカスミ網による捕獲などの補助的な手法が必要となる。ところが、捕獲調査には捕獲技術や多大な調査努力を要するため、より省力的で効率的な手法が求められる。演者は対象を林床性鳥類に絞り、誘引操作を用いたカメラトラップ法により効率的に対象種を記録できる設置方法を検討した。その結果、10.6回/カメラ日と高頻度で対象種の記録を行うことが可能であった。また、カメラトラップ法により記録された鳥類の種組成は捕獲調査とは有意に類似していたが,直接観察とは類似しているとも類似していないとも言えなかった.この違いは,ツグミ類などの林床性鳥類がカメラトラップと捕獲でのみ記録されたためと考えられた。


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里山における哺乳類の出現頻度とその季節変化
内川宗久
(鹿大院農)
畑邦彦
曽根晃一
 里山は多くの野生動物の生息地となっている。しかし、里山に生息する野生動物による農林産物への被害は深刻な問題となっており、被害対策を考える上でそれらの生態に関する情報が必要となる。そこで今回は哺乳類に注目し、里山内に生息する種とその出現頻度を把握するため、鹿児島県薩摩川内市にある里山において、2007年7月から2007年12月まで6台の赤外線センサー付きカメラ(以下、カメラ)を設置しモニタリング調査を行った。カメラは主に、フィールドサインが多く見られた林道に沿って設置し、餌による誘引は行わなかった。その結果、ニホンジカやホンドタヌキなど10種の哺乳類が撮影され、ニホンイノシシやニホンジカなどは夏から冬にかけて撮影頻度が変化した。また、ノウサギやニホンアナグマなどの撮影頻度はカメラ設置場所間で異なり、比較的狭い範囲の中でも出現頻度の高い場所と低い場所があることが示唆された。