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鹿児島県の常緑広葉樹林におけるヒメネズミの個体群変動に影響する要因
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中村麻美
(鹿大院農) 平田令子 畑邦彦 曽根晃一 |
遠方への種子分散は密度依存的死亡や他の植物との競争を回避することを可能にし、結果的に種子の発芽や実生の定着が促進されるため非常に重要である。種子食性野ネズミのアカネズミとヒメネズミは冬場の餌の確保のため、堅果類を様々な場所に貯食する「貯食活動」を行うことで知られ、これは堅果類の分布拡大や更新に貢献していると考えられる。この貯食活動の樹木に対する役割を解明するためには、野ネズミの個体群動態の解明をすることが必要である。昨年の発表で、アカネズミ個体群は堅果生産量の影響を直接的に受けていることが明らかとなった。そこで今回、ヒメネズミの個体群変動特性も明らかにし、変動の要因について考察する。本研究では、1995年以来実施された堅果生産量と野ネズミ生息数の調査結果を用いて解析を行った。その結果、ヒメネズミ個体数は堅果生産量に影響されていたが、変動幅や同調性は、アカネズミよりも小さかった。 |
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霧島えびの高原におけるニホンジカ生息密度の変化
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松山弘子
(宮大農) 中尾登志雄 |
えびの高原に分布する絶滅危惧種ノカイドウの個体数減少にはニホンジカ剥皮害による枯死も一因となっている。ノカイドウへの剥皮害は2000年〜2003年に激しかったがシカ防護ネット等の設置によりここ数年被害は減少してきている。ここでは防護ネット等設置前(2002年)と後(2008年)のニホンジカ生息密度の月別変化について報告するが、ノカイドウの被害は減少しているものの、生息密度はほとんど変化していない。 |
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えびの高原においてニホンジカの採食が下層植生に与える影響
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濱田大輔
(鹿大院農) 畑邦彦 曽根晃一 |
えびの高原においてニホンジカの採食が下層植生にどのような変化をもたらしているかを明らかにするため、シカ侵入防止柵の内外で植生を調査した。柵内外に調査プロットを設置し、木本類と草本類に分け種数を記録し、現存量を測定した。木本類の種数は柵内の方が柵外よりが多く、草本類の種類は柵外の方が多かった。一方、現存量は木本類、草本類のいずれも柵内の方が多かった。木本類の現存量の分布は柵内外で異なり、木本類の幹や枝の占める割合は柵内で、葉の占める割合は柵外で高かった。スズタケは柵内外共に葉の占める割合が高かった。採食圧がかかる柵外では採食に強い草本類が、スズタケとの競争が働く柵内では、樹高を伸ばし光を十分に獲得した木本類が生存することが示唆された。木本類は採食圧の有無によって、部位に対するエネルギーの投資を変化させるのではないかと考えられた. |