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マツノマダラカミキリの繁殖にとってのクロマツ低木の資源利用性について
林崎泰
(鹿大院農)
大久保恵介
畑邦彦
曽根晃一
 桜島でのマツ材線虫病被害は、2004年度以降は減少傾向にあるが、同年頃からマツ低木(5m未満)での枯死木が見られ始めた。その傾向は特に、2006、2007年に顕著になり、高木の減少した場所では、低木を資源として利用していることが考えられる。このことから、マツノマダラカミキリ(以下カミキリ)の低木での後食や繁殖成功が、桜島におけるマツ材線虫病の今後の動向に、著しい影響を持っていると考えられた。そこで、低木の被害木を伐採し、後食、産卵、材への穿入、成虫の羽化脱出について調査した。これらの結果をもとに、高木が消滅した場所でのカミキリの個体数レベルの維持に果たす低木の重要性と、今後の桜島におけるマツ材線虫病の被害動向について考察した。


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マツノマダラカミキリ供試虫数と羽化時期の推定精度
鈴木敏雄
(井筒屋化学)
吉永憲市
吉田成章
 マツノマダラカミキリ羽化調査において、どの程度の供試虫数が必要かについては明らかではない。そこで、サンプル数(供試虫数)と50%羽化日等の推定精度を検証した。同一被害地から採集した被害材から羽化したマツノマダラカミキリの複数年の大規模データを使った。羽化時期の分布は正規分布とは見なせなかった。羽化時期の分布の統計量に差違がない場合も極端に羽化数が少ない日があり、この集団からサンプリングを行う場合、統計的なモデルを作って机上で検討した場合と異なることが予想された。このデータからコンピューターでランダムサンプリングを行った。サンプル数と推定精度の関係ではサンプル数の増加とともに推定精度が上がるという一般的な関係が得られた。羽化初発日、50%羽化日、最終羽化日の中で推定精度が最も安定しているのは50%羽化日であった。欠測が生じた場合の推定精度の低下についても検証した。


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キョウチクトウスズメの熊本における越冬の可能性について
佐藤大樹
(森林総研九州)
 2007年10月下旬に熊本市内にある森林総合研究所九州支所内のキョウチクトウに、キョウチクトウスズメの発生を見た。本種の九州への定着の可能性を探る為、終齢幼虫を室内飼育して蛹を得、20頭を野外網室内の落ち葉の下に埋め込み、翌春まで羽化の有無を調査した。合わせて地温を測定した。11月16日から12月7日までに8頭が羽化し、11月30日から12月7日までに集中していた。しかし、11月16日に羽化した1頭を除き、成虫の羽は伸びきっておらず、正常な成虫ではなかった。死亡蛹は11月30日から認められ、2008年1月までの間に12頭全てが死亡した。事例が限られているが、11月初旬に蛹化した蛹は羽化しても次世代を作ることができず、さらに蛹も熊本では越冬出来ないと考えられた。