612
2007年に鹿児島県で発生した広葉樹の集団枯損被害木からのカシノナガキクイムシ及び他の甲虫類の脱出
廣末裕治
(鹿大農)
後藤秀章
曽根晃一
畑邦彦
 07年に鹿児島県各地でカシノナガキクイムシ(以下カシナガ)が原因と考えられる広葉樹の集団枯損が発生した。しかし、被害木にはカシナガ以外の穿入孔も多数あったため、これら被害木におけるカシナガ及び他の甲虫類の生息・発生状況について調査した。‘07年11月に鹿児島県南九州市及びさつま町でマテバシイとツブラジイの被害木丸太を採取して室内に静置すると共に、翌年3月に同県垂水市でマテバシイ及びスダジイ被害木にチューブトラップを設置し、それぞれ出現したカシナガ及び他の甲虫類の個体数を記録した。その結果、南九州市の丸太ではカシナガ及びホソカタムシの1種が大量に出現したが、さつま町の丸太ではカシナガは出現せず、他のキクイムシが数種出現した。垂水市のトラップではカシナガ、他のキクイムシ数種、上記ホソカタムシ等が捕獲された。ここでカシナガは全ての調査木から捕獲されたが、今回は3月後半には捕獲が開始していた。


613
薩摩半島におけるカシノナガキクイムシ2集団の分布 ー2008年の調査結果よりー
後藤秀章
(森林総研九州)
臼井陽介
畑邦彦
 カシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)は、ナラ類の集団枯損の原因、Raffaelea quercivoraの媒介者である。国内のカシナガには、日本海沿岸を中心として分布する集団(以下、日本海型)と、紀伊半島・南西諸島に分布する集団(同、太平洋型)の、遺伝的に異なる2つの集団があることがわかっている。九州では薩摩半島と大隅半島の先端部に太平洋型が、それ以外の地域には日本海型のカシナガが分布している。薩摩半島先端の太平洋型カシナガは、近年この地域に侵入した可能性があり、今後分布を拡大するかもしれない。そこで薩摩半島において太平洋型カシナガが分布を拡大した場合に備え、現在の分布を記録するため、両型の分布境界付近で本種の分布調査を行った。また、比較のため大隅半島側でも同様の調査を行った。


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下刈省力によるスギ植栽試験地におけるコウモリガの寄生状況
臼井陽介
(鹿児島県森林
技術総合セ)
下園寿秋
 人工林の管理において,最も労力と費用を要するのは下刈作業であり,その経費を削減するため,大苗植栽や粗植,下刈の有無など下刈を省力する試験が行われている。一方,下刈やツル切りを実施しなければ,コウモリガが立木へ寄生しやすい条件を作ることになり,立木の枯損や材質劣化を招く傾向が大きくなると予想される。 そのため,下刈省力によるスギ植栽試験地において,コウモリガの立木への寄生状況を調査したので報告する。