701
抵抗性クロマツの発根率における親子相関
大平峰子
(森林総研林木
育種センター九州)
松永孝治
宮原文彦
宮崎潤二
真崎修一
吉本貴久雄
山田康裕
三樹陽一郎
田上敏彦
小山孝雄
宮里学
鳥羽瀬正志
白石進
 抵抗性クロマツの発根率には,家系や個体によって大きな差があることが報告されている。さし木苗の生産を行うにあたって,発根率の良い家系あるいは個体を選抜することは重要であるが,発根率の親子相関について報告された事例はない。そこで本研究では,15クローンの抵抗性クロマツとその自然受粉実生苗の発根率を調査し, 両者の関係について解析した。その結果,親の発根率と子の発根率の平均値の間には高い相関関係があることが明らかとなった。また,15クローンの発根率には差が見られ,川内290,吉田2,大瀬戸12,波方37は発根性の良い親である可能性が高いと考えられた。


702
抵抗性クロマツ自然交配3家系におけるマツノザイセンチュウの人工接種に対する用量反応
松永孝治
(森林総研林木
育種センター九州)
真崎修一
大平峰子
倉本哲嗣
星比呂志
 抵抗性マツ自然交配の実生苗では花粉親の違い,抵抗性に関する遺伝子の分離により抵抗性にばらつきが生じることが知られている。現在,マツ材線虫病対策として植栽されている抵抗性マツは抵抗性品種の自然交配家系実生苗に線虫アイソレイト島原5,000頭を人工接種して生き残ったものであるが,これらの苗木がより多くの線虫の感染を受けた場合に抵抗性が発揮されるかどうか明らかになっていない。そこで,抵抗性クロマツ自然交配家系の線虫の感染頭数に対する抵抗性の分布を明らかにするために,抵抗性クロマツ自然交配3家系の2年生実生苗に濃度の異なる線虫懸濁液を接種して,その後の発病と枯死を調査したので報告する。


703
マツノザイセンチュウ接種検定合格苗の抵抗性の有効期間に関する研究(U) −11年間の結果−
宮原文彦
(福岡県朝倉
農林事務所)
 クロマツ実生苗にマツノザイセンチュウを人工接種し、健全に生き残った苗が各地で販売され、海岸林などに植栽されている。これらの苗木が、その後のマツノザイセンチュウの侵入に対していつまで抵抗性を保持しているのかを、1箇所の固定試験地において7種類・14パターンの接種間隔による人工接種で調査した。材料は、遺伝的な変異を狭くするため、単一年度に採種した単一家系の抵抗性クロマツ苗を供試した。複数回接種した区について、接種後の生存率を接種間隔別に比較すると、毎年接種区における各回の生存率の低下は小さく、過去11回の毎年接種で常に健全であった個体も認められた。一方、接種間隔が5年〜10年と開くほど接種における生存率の低下が大きかった。このことから、これまで指摘されてきたように、接種検定はあくまでも検定時点での苗の選別が目的であって、合格した苗の強さの保持期間を保証するものではないことが示唆された。