704
RAPDマーカーによる株立ち性ケヤキ巨木のクローン鑑定
管蘭華
(九大生資環)
白石進
矢幡久
 福岡銀行の創業130周年記念樹として新本部ビルに植栽されたケヤキ巨樹は株立ち状を呈し、24本の幹で構成されている。この株立ち性ケヤキが単一の個体か複数個体の集合体であるか否かを検証するため、DNA分析法の一つであるRAPDマーカーを用いてクローン鑑定を行った。株立の幹から9本を選び、その葉をDNA分析に供試した。また、対象として実生苗4本、九州大学構内の植栽木3本を使用した。96オペローン社製ランダムプライマー(10塩基)を用いた予備試験の結果を基に、増幅がよく、再現性が高く、かつ、個体間変異が認められた24プライマーを選んだ。この24プライマーによるRAPD分析の結果、供試した9本全てが同一バンドパータンを示したことから、本巨大ケヤキは一つの個体に由来すると思われる。


705
リボソームDNAによるカバノキ類における樹種識別の可能性
田川真理
(九大生資環)
白石進
 現在、木材の樹種識別は主に解剖学的形態特徴により行われている。この手法では、種レベルの識別は困難とされている。本研究ではDNA多型を利用して種レベルの識別を正確に行うことができる樹種識別システムの確立を目指している。これまで、コナラ属等で、18SリボソームRNA遺伝子(以下、18S rDNA)の変異性を調べてきた。今回は、カバノキ類について18S rDNA変異を調査し、樹種識別の可能性を評価する。さらに、18S rDNAより塩基長が長く、変異も多いとされる26S rDNAについても評価を行ったのでその結果を報告する。


706
スギ根系を用いたDNA分析
スハリヤント
(九大院生資)
白石進
大橋瑞江
 近年、根系(地下部)空間分布の研究が行われるようになってきた。根の形態学的特徴等から樹種や個体を識別することは難しく、DNA分析による鑑定が行われている。しかしながら、スギの根からのDNA抽出は難しく、広く使用されているCTAB法だけでは,PCRで使用できる鋳型DNAを得ることは困難である。そこで本研究では、簡便で信頼性の高いスギの根からのDNA抽出・精製法の開発を行った。その結果、粗DNA溶液をアガロースゲルで分離し,高分子DNA分画のみを回収することにより,根の直径が1mm以下、1-2mm、3mm以上のいずれの試料からもPCR増幅が可能なDNAを調整することができた。また、同一個体の根と針葉それぞれから調整したDNAは、同一のMuPSパターンを示した。このことより、本抽出・精製方法はスギ根からのDNA調整に有効かつ実用的な方法であると考える。