709
ナンゴウヒの主要クローンの特性調査
草野僚一
(熊本県林研指)
 ナンゴウヒは,主に、熊本県阿蘇郡南郷谷地方で造林されているヒノキさし木在来品種で,樹幹が通直完満,とっくり病にかかり難いという特性を有している(宮島,1989)。一方で,ナンゴウヒは複数のクローンからなる品種であることが報告されている(田島・宮崎,1973;Uchidaら,1993;家入・宮島,2000)。また,外部形態等から「太枝系」と「細枝系」に分類され,完満性や材質が異なるとされている(家入ら,2004)。しかし,クローンごとに樹幹型や材質が異なるのかについては,明らかにされていない。将来,品種の特性を活かし,より均質な木材生産を行うためには,クローンごとの特性把握が重要である。そこで今回,ナンゴウヒの主要クローンと実生ヒノキの林分において,特性(樹幹型とFAKOPP値)の比較調査を行ったので,結果を報告する。


710
クヌギ挿し木と実生の25年生時における成長及び材質の比較
佐々木義則
(大分県林試)
河津渉
 林地植栽後23年が経過したクヌギの挿し木及び実生(樹齢:25年生)について、成長(樹高、胸高直径など)及び材質(動的ヤング係数、容積密度など)を調べた。その結果、挿し木と実生の間には、ほとんど差異は認められなかった。挿し木は実生に比べて幹が通直干満であり、幹の芯腐れ等は認められなかった。これらの結果から、クヌギの挿し木は、優良個体等のクローン苗生産において、有望な増殖方法と考えられた。


711
スギ苗木のトレーサビリティシステムについて
増永保彦
(宮崎県林業技術セ)
 スギなどの人工林の樹木は、長期にわたり様々な環境下で生育するため、森林整備に当たっては、品種の選定が重要になってくる。しかし、森林所有者等が求める品種の苗木が確実に届けられるシステムが確立されていない。そこで、苗木の生産から森林所有者等へ至るまでの過程を遡って、品種の確認ができるシステム、いわゆるトレーサビリティシステムの開発について検討したので報告する。