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ピロディン測定値によるスギの炭素固定量推定のための基礎調査
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大川雅史
(福岡県森林 林業技術セ) 真崎修一 倉本哲嗣 星比呂志 |
福岡県では平成20年度から森林環境税を導入したが、この導入の理由には生産現場としての森林の整備、水源涵養林としての森林の整備に加え、地球温暖化防止に資する森林の育成も含まれている。したがって育種分野から容積密度が高く、二酸化炭素固定能力に優れたスギ精英樹の育種選抜を進めることは、今日の社会情勢等を考慮すれば重要であろう。しかし九州育種基本区におけるスギ精英樹の容積密度に関する遺伝的な情報が少ない。そこで簡易に容積密度が測定できるピロディンを用い、九州各地に設定されている検定林内のスギの容積密度が遺伝的に支配されているか検証した。また、様々な林齢のスギ林のCO2固定量に関する基礎情報として、検定林で測定したピロディン値と九州育種場内に設定されているスギ精英樹遺伝資源保存林(林齢13年)のピロディン値を測定し、13年次ならびに30年次のスギの容積密度の順位と値に変動があるかに関しても検証した。 |
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地域差検定林を用いたスギ精英樹の樹幹型に関する遺伝解析
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田上敏彦
(宮崎県 林業技術セ) 真崎修一 松永孝治 倉本哲嗣 星比呂志 |
優れたスギ品種の開発に際して、樹幹の形状比率が優れ、材積量といった形質が遺伝的に支配され、かつ地点によって変動しないことを明らかにすることは、品質保証の点から重要であるが、これまで実際の材の収穫量に関する報告はあまり行われていない。特に、次世代スギの選抜に当たっては、成長・材質といった形質に加え、形状についても遺伝的に優れているかを明らかにしておくことが、木材利用の点から、ひいては森林所有者の所得向上の点から重要である。そこで、地域差検定林のスギ精英樹を対象に、4m採材の末口に当たる8m、12mの直径を測定し、胸高直径との比率および材積量を算出し、これらの形質がどの程度遺伝的に支配されているかを検証した。その結果、同一胸高直径でも品種で樹幹型が異なること、樹幹型の反復率は0.7となり、優れた形状を示す個体は異なった植栽箇所でも比較的良い形状である可能性が示唆された。 |
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九州産スギ精英樹の林分材積量予測に関する基礎解析
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倉本哲嗣
(森林総研林木 育種センター九州) 松永孝治 中島久美子 村上丈典 大平峰子 星比呂志 |
九州育種基本区内で選抜されたスギ精英樹クローンについて検定林を設定し、成長量等に関する調査を続けてきた結果、基本区内でのスギ精英樹クローンの成長や材質に関する遺伝的特性がおおむね明らかになってきた。しかし林業経営を考慮したスギ精英樹や次世代品種の普及には、成長や材質の特性に加え、林業経営上の安全性や収穫予測に関する特性についても検証しておく必要があるだろう。そこで、スギ精英樹が複数の検定林に植栽されている精英樹ごとに、植栽後の若齢時の枯損率や植栽環境による成長量の増減、さらに植栽後30年経過した伐期における林分あたりの推定材積量について解析し、これら特性が九州各地でどの程度変動するのか、ならびにどの程度遺伝的に支配されているのか検討した。 |