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佐賀県産スギ精英樹F1クローンの成長解析
真崎修一
(佐賀県林試)
倉本哲嗣
松永孝治
 近年、材価の低迷から従来の標準伐期齢での主伐による林業経営が困難になっている。そこで成長が早く短伐期で収穫可能な次世代品種の開発が必要とされている。今回成長形質に関する次世代スギの選抜が可能か、佐賀県内に設定されているスギ精英樹のF1個体群のクローン試験地(2箇所)の20年生次生長量調査結果等を用いて解析した。その結果異なる2地点でのクローンではほぼ同様の成長を示した。さらに、九州育種基本区内での成長予想を行い、各地で得られるであろう樹高および胸高直径の推定値を求めたところ、今回解析対象としたスギF1クローン33クローン中8クローンでこれまでのスギ精英樹の成長上位に相当するクローンが存在することが予想された(5段階評価で樹高・胸高直径共に5以上が1クローン、4以上が7クローン)。これらのことから精英樹のF1を対象に次世代スギ候補を選抜できる可能性が示唆された。


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精英樹自然交配苗から造成された31年生スギ実生造林地における成長、材質形質の変異と次世代優良木の選抜
星 比呂志
(森林総研林木
育種センター九州)
倉本哲嗣
宮原文彦
真崎修一
吉本貴久雄
草野僚一
前田勇平
山田康裕
田上敏彦
宮里学
倉原雄二
大平峰子
白石進
 近年、九州地区をはじめとして、全国でスギ中径材の需要が拡大している。今後の健全な林業経営のためには、材質が標準以上で成長が早い短伐期中径材用の次世代品種が必要不可欠である。この品種の開発のため、精英樹同士の自然交配苗により造成された熊本県下の国有林の31年生実生造林地2箇所において、樹高、胸高直径等の成長形質、ヤング率の指標となる樹幹内音速等の材質形質を調査し、優良個体の選抜を試みた。その結果、胸高直径は13.5〜47.5cm、推定ヤング率はE50〜E90等、どの形質でも変異の幅が大きかった。成長、材質ともに優良な個体も見いだされ、10個体を次世代優良木として選抜した。平均樹高は21.5m、平均胸高直径は34.0cmで、熊本地方スギ林分収穫表の地位上での値よりもかなり大きかった。推定ヤング率はE70〜E90であった。これらから冬季に採穂し、九州育種場でつぎ木を行いクローンを確保した。