201
帯状・群状伐採地におけるスギ・ヒノキの成長特性
中間康介
(九大生資環),
溝上展也,
井上昭夫,
太田徹志,
吉田茂二郎
 過去に調査歴のある宮崎県諸塚村の帯状伐採林(スギ・ヒノキ混栽)と大分県湯布院町の群状択伐林(スギ)を再調査し、成長量において個体ベースモデルによる解析及びシミュレーションを行った。期間成長量において、林縁付近の更新木に成長減衰がみられた。また保残木に関して、林縁付近で直径成長の増進がみられた。垂直的競争指数VCI(Mitsuda et al.)を用いたシミュレーションにおいては、帯幅及び群状伐区の辺長が樹高の1倍前後より大きくしても植栽木の平均成長はほとんど変化しなくなることが明らかとなった。また、ヒノキよりもスギの方が、樹高成長よりも直径成長の維持を考慮した方が、より大きい伐区サイズが必要である事が分かった。加えて、自身の樹高や方位を考慮した競争指数による解析を行い、成長を支配する因子の解明及び伐区設定の基準の提示を目指す。


202
霧島山系択伐指標林内の小面積皆伐面におけるアカマツ・モミ・ツガの更新状況
石川ねね
(九大生資環),
溝上展也,
吉田茂二郎
 アカマツを含むモミ・ツガ天然林は、暖温帯上部から冷温帯下部にかけての移行部に成立し、現在は限られた地域にのみ存在する貴重な森林である。霧島山系にはモミ・ツガ天然林が多く残っているが、過去における伐採の影響により、霧島山系においてもモミ・ツガ天然林の面積の減少、更には著しい分断化が引き起こされている。そのため、霧島屋久国立公園におけるモミ・ツガ林の健全な育成・維持を行うための施業法の確立が求められる。今回は小面積伐による側方天然下種更新の誘発を目指して、約20年前に設定した試験地における更新状況を明らかにすることを目的として、小面積皆伐面におけるアカマツ・モミ・ツガの更新木の成長過程の継続調査を行った。


203
帯状択伐林の伐区設定に関する研究
鶴崎 幸
(九大生資環),
溝上展也,
吉田茂二郎
 帯状択伐林は複層林施業の一つである。これは森林の生態学的機能発揮を図りつつ合理的に木材生産できる可能性がある点に特徴がある。既存の研究では林木の成長を考慮した伐区サイズの検討や、帯状択伐することで生物多様性に与える影響に関する研究などが行われている。演者らはこれまで作業効率の良い伐区形状について検討してきた。この研究は矩形モデルを用いたものであった。そこで今回は現実林分の地形情報などを使用し、より現実に近い条件で帯状択伐区の望ましい形状について検討する。地形によって生じる生産性の変化、収益を確保するために必要なロットの大きさなどについても今後考察していく予定である。


204
広葉樹林更新適地判定方法の検討
小田三保
(宮崎県林業技術セ),
福里和朗,
三樹陽一郎
 近年、全国各地で広葉樹林化に関する研究が行われているが、宮崎県においても新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発」に参加し、ランドスケープレベルにおける広葉樹林化の適地判定技術の開発に取り組んでいる。過去の研究等から高木性広葉樹が早期に侵入・定着する要因として、種子源となる広葉樹林からの距離や現植生以前の土地利用状況があげられている。そこで今回は、これらの要因を用いて広葉樹林への更新適地判定を行ったので報告する。


205
大分県長期育成循環施業モデル団地に関する研究−植栽木の更新状況について−
溝上展也
(九大農),
保坂武宣,
鶴崎 幸,
松本 純,
吉田茂二郎
 わが国の森林面積の約4割に相当する1000万haは人工林であり、その多くは大面積皆伐−人工植栽方式によって造成されたスギやヒノキ等の針葉樹同齢林である。この構造が単純な同齢人工林をいかに多様な構造に転換すべきかということが世界的関心事となっている。平成13年度より国の施策として始まった「長期育成循環施業」は、上記の問題を解決する一つの方策として期待されているが、その造成事例は少なく、その効果も十分に明らかでない現状にある。大分県では平成18年度より約150haの県民の森を対象に、長期育成循環施業モデル団地造成に着手した。設計の基本コンセプトは、モデル団地全体としては帯状択伐方式を基本とした法正林のかたちを維持しながら、局所的には従来からの皆伐方式等を含めたさまざまな施業方法が比較できる多様な森づくりをめざすことである。本報告では、このモデル団地における植栽木の更新状況について紹介する。