301
強度間伐後17年間のスギの成長過程−複層林上木の樹幹解析から−
荒木眞岳
(森林総研九州),
重永英年
 近年、スギ・ヒノキ人工林では、従来に比べより強度な間伐を行う事例が見られるようになってきた。本研究は、強度間伐を行った後の残存木の成長経過について明らかにすることを目的とした。鹿児島県薩摩川内市にあるスギ複層林(スギ−スギ二段林)を調査地とした。この複層林は、33年生時に本数で62%の間伐が行われ、17年が経過している。複層林の上木を強度間伐が行われた林分とみなし、強度間伐区とした。また、複層林に隣接する、同時期に植栽され通常の施業が行われてきた林分を対照区とした。強度間伐区と対照区について、毎木調査を行った。また、両区から5本ずつサンプル木を選んで伐倒し、樹幹解析を行った。強度間伐区と対照区について、現在の林分構造(直径頻度分布、林分材積など)の違いを明らかにする。また、サンプル木について、これまでの成長経過(直径、樹高、材積)を復元し、強度間伐が上木の成長に与える影響を明らかにする。


302
下刈りパターンの違いによる下刈り功程
金城智之
(鹿大農),
寺岡行雄,
芦原誠一,
竹内郁雄,
井倉洋二,
馬田英隆
 日本の人工林の保育作業において下刈りは労力と費用を最も要するものであり、低コスト化が求められている。そこで、鹿児島大学高隈演習林の植栽後3年を経過したスギ幼齢林を対象として、下刈りを毎年実施、隔年で実施あるいは全く下刈りをしない等の6パターンの下刈り試験地(面積2.57ha)を設けて、下刈り功程の違いを調査してきた。本報告では、3年目の下刈りまでの実施結果を基にして、植栽当年から毎年下刈りを行う箇所、植栽当年と3年目に行う箇所、2年目のみ行う箇所、2年目と3年目に行う箇所、3年目のみ行う箇所において下刈り功程を比較した。その結果、毎年下刈りを実施した場合と比べて、隔年もしくは2年目以降に初めて下刈りを実施した場合は人工数が増加した。下刈り回数を省くことが、下層植生を繁茂させ、回数減による単純な低コスト化にはならないことが示唆された。


303
ヒノキ壮齢人工林の群落構造
加茂明子
(宮大農),
高木正博
 針葉樹人工林の不可避的な長伐期への移行が検討されているが、人工高齢林の実態については明らかにされていない面が多い。本研究では約90年生のヒノキ人工林における広葉樹を含めた群落構造について調査した。調査は、宮崎大学農学部附属田野フィールド(演習林)に内の、一次谷および二次谷を含む源頭部に設置した100m四方の1haプロットで行った。胸高直径5cm以上の個体について座標、樹種および胸高直径を記録した。広葉樹の混入(分布)の様式を、ヒノキとの位置関係および微地形による違いを解析した。


304
低密度植栽されたスギ34年生林の生育事例
竹内郁雄
(鹿大農),
寺岡行雄
 低密度植栽は、苗木、植栽、保育間伐などの費用を抑制すると考えられるが、生産材の量や質への影響についてはよく分かっていない。本報告は、近畿・中国森林管理局管内にある植栽密度が4段階(1000、1500、2000、3000本/ha)のスギ34年生林で生育実態を調査し、成長や枝の着生状況などについて検討したものである。1000本/haを除いた他の密度区では、26年生時に弱度間伐が実行された。34年生時の立木密度は、低密度林から順に959、1279、1641、1627本/haであった。平均樹高は18.3〜21.8mで土地条件に違いがみられた。これら林分での胸高直径、林分幹材積や枝下高、それに地上高6m以下に着生する枝数や枝直径などについて、その実態を検討した。


305
人工林下層木本植物の個体数密度シミュレーション
前田勇平
(熊本県林研指),
荒木眞岳
 近年、材価低迷等の影響から間伐遅れ林の増加が懸念されている。そのような中、熊本県では間伐を行い人工林を針広混交林へと誘導するための事業が展開されている。しかし、間伐等の影響による下層植生の動態については不明な点も多く、針広混交林化のための効率的な施業は示せていない。そこで本研究では人工林下層の木本植物に着目し、それらに影響を与えると考えられる光環境や温度環境等を指標する数値を変数とする個体数密度予測モデルを構築し、それらが樹種別の個体数密度に影響を与えることを明らかにした。当日は、そのモデルを用いて様々な条件を設定した際の個体数密度シミュレーションを行い、人工林の針広混交林化を図るうえでの理想的な条件を提案する予定である。