311 |
同一環境下に植栽されたスギ精英樹の窒素利用特性
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香山雅純 (森林総研九州), 山田浩雄 |
我が国における主要な造林樹種であるスギは、多くの品種が開発されてきた。スギの各品種は同一立地環境下においても、成長が異なる傾向を示す。一般的に、成長量の高い樹木は高い光合成能力を有し、高い光合成能力を得るためには葉内の窒素濃度を高める必要がある。また、葉内窒素に関しては資源の分配にも特性があり、高い光合成能力を得るためには、光合成反応に関わるタンパク質に高い割合で投資する傾向もある。これらの傾向は光合成窒素利用効率 (光合成速度/窒素濃度) で推定することが可能である。本研究は、森林総合研究所林木育種センター九州育種場の同一環境下に植栽された、成長特性の異なるスギの精英樹において光合成速度と葉内窒素濃度を測定し、窒素利用特性を品種ごとに検討した。 |
312 | Mスターコンテナを用いたスギ苗の育成試験 |
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三樹陽一郎
(宮崎県林技セ) |
植栽作業に従事する林業労働者の減少や高齢化が進む中、裸苗と比較して根が充実しているコンテナ苗の利用は植栽適期の拡大による労力分散が期待されるが、さらに植栽作業の効率化や労力の軽減を図るためにはコンテナ苗の軽量化が必要と考えられる。そこで、Mスターコンテナ(M-StAR Container(Multi-Stage Adjustable Rolled Container))を作製し、主にスギ苗の根系部分の小型化について検討した。Mスターコンテナは裁断した波形ポリシートを筒状に丸めてトレーに立てた容器で、その直径は多段階に調節でき、また育苗後の根系部分の取り出し作業はシートの展開により容易である。今回は、容器の直径及び高さがスギ苗の根系等に与える影響を調査したので報告する。 |
313 |
宮崎県内の里山にみられたコナラ属の中間個体の形質と雑種性の検討
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甲斐重貴 (宮大農), 宇佐川紫織 |
コナラ属コナラ節に属する種は、わが国の里山に広く分布しているが、これらの種間には自然交雑が起こりやすく、さまざまな種間雑種の存在が知られている。しかし、九州地方における雑種の形成や分布の状況についてはほとんど報告がない。今回、宮崎県児湯郡都農町、宮崎市田野町の2カ所で、雑種と思われる6中間個体が見いだされた。そこで、原種と推定されるコナラ、カシワ、ナラガシワ更にミズナラの形質との比較を行い、これらの中間個体の雑種性を検討した。比較の対象とした形質は、葉(葉身長ほか7形質)、堅果(堅果長ほか2形質)及び殻斗(殻斗高さほか2形質)であった。その結果、都農町の3個体はナラガシワとコナラまたはカシワの雑種、田野町の1個体は、コナラとカシワの雑種のコガシワ、1個体はコナラとコガシワの雑種、他の1個体はナラガシワと推測され、宮崎県の里山でもコナラ節の種間雑種が形成され、分布していることを確認できた。 |
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スギ高齢林の広葉樹による幹被害
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鈴木寿仁 (鹿大農), 竹内郁雄, 寺岡行雄, 吉田茂二郎 |
調査地は鹿児島県轟木国有林内にあり、間伐強度が強度、中度、弱度及び無間伐の4区に設定されたスギ人工林(102年生)間伐試験地である。各間伐区における広葉樹によるスギへの幹被害を報告する。幹被害は広葉樹の枝や幹が強風などによりスギ樹幹に接触し、幹材部に傷を受けたものとした。被害を及ぼしている広葉樹はマテバシイ、ホソバタブ、イヌビワなどであった。幹被害の被害高は地上から18mに達するものまであり、そのほとんどは横方向へ伸びた枝による接触被害によるものであった。長伐期施業の管理は下層植生の維持も望まれるが、施業間隔が長いため、風当たりのよい立地条件では広葉樹の成育を制御する施業が必要性であると考えられる。 |
315 |
変班糲岩地帯に生育するスギ針葉の養分状態
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立石陽夏 (熊本県立大), 重永英年, 釣田竜也, 大貫靖浩, 井上昭夫 |
熊本県北部の変班糲岩の分布域において、葉枯症状を特徴とするスギ壮齢林の衰退が報告されている。本研究では、現在でも衰退がみられる変班糲岩の分布域とその周辺に生育するスギ人工林とで葉中元素含有量を比較し、養分欠乏の点から衰退原因を検討した。当年葉のK含有量は、変斑糲岩地域で4.1±1.0 mg/g と、周辺地域の5.5±0.7 mg/g に比べて低く、生育が不良になると考えられる含有量の範囲にあった。また、変班糲岩の分布域では、1年葉のK含有量に対する当年葉のK含有量の比率が高く、旧葉部から新葉部へのKの回収が進んでいることが示唆された。Mgについては、当年葉、1年葉ともに周辺地域に比べて変斑糲岩の分布域で含有量が高く、Caについては、両者で違いはみられなかった。したがって、変班糲岩の分布域で観察されるスギ人工林の衰退については、Kの低養分状態が関与していることが予想された。 |