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異なる伐採幅の帯状伐採地における下刈り省力化の可能性
−伐採後初期の再生植生に及ぼす伐採幅および立地環境の影響− |
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長田悠佑 (宮大農), 山川博美, 松永慎平, 伊藤 哲 |
戦後の拡大造林による人工林は西日本を中心に徐々に伐採可能な時期を迎えている。一方で、林業経営の悪化から人工林伐採後に再造林を放棄する例が増加しており、再造林を推進するための低コストな更新・育林技術が必要とされている。人工林施業において、最も労力と費用を要する作業は下刈りであり、低コスト育林を行なう上で、下刈りの省力化は重要な課題である。宮崎県都城市の青井岳国有林では“コスト1/2を目指した誘導伐システム(帯状伐採による複層林施業)の開発”が行なわれている。本研究では2つの異なる伐採幅(10mおよび20m)の帯状伐採地において、植生の再生状況、更新面の光環境、斜面位置、傾斜、および伐採搬出に伴う地表攪乱との関係を調査した。これらの結果に基づき、伐採幅および立地環境が伐採後初期の再生植生の量的および質的な違いに及ぼす影響について考察し、帯状伐採による下刈り省力化の可能性を検討する。 |
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前生樹量の異なる針葉樹人工林伐採後に成立した再生植生の初期動態
−伐採前、伐採1年後および3年後の比較− |
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山川博美
(宮大農), 伊藤 哲, 中尾登志雄 |
森近年、日本国内では針葉樹人工林伐採後に再造林を行わない再造林放棄地の増加や針葉樹人工林の広葉樹林への転換といった伐採後の植生再生に関わる問題が顕著となっている。これに伴い、針葉樹人工林伐採後の更新メカニズムの解明、更新適地選定、更新完了基準および更新手法といった更新技術の提示が急務となっている。これまでに、我々は、伐採実験によって、伐採前の下層植生および伐採1年後の再生植生について解析を行ってきた。しかしながら、伐採後の更新予測や更新判断基準を提示するにあたっては、中長期的なデータの解析が必要となる。そこで、本研究では、下層植生を調査した上で伐採した針葉樹人工林において、伐採前の下層植生、伐採1年後および3年後の再生植生の動態を解析した。また、これらの結果に基づき、更新判断基準についても議論したい。 |
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常緑広葉樹数種におけるモジュールの光環境に対する反応
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坂本明日香 (宮大農), 高木正博 |
森林内に生育する樹木は、生活史を通して不均一な光環境に晒される。そのため、光環境に対して形態を可塑的に反応させる能力をもつ。この能力は樹種ごとに異なり、戦略の違いにつながっていると考えられる。これまで、宮崎大学田野フィールドの約90年生の常緑広葉樹二次林において、個体レベルの光環境に対する反応を調査してきた。その結果、個体レベルの光環境への反応は、樹種ごとに異なっていることがわかった。しかし、その反応のメカニズムは明らかになっていない。樹木は当年枝などのモジュールが積み重なって現在の形ができていると考えられるため、モジュールという単位における光環境への反応を調査することによって、個体レベルでの反応のメカニズムを明らかにすることができるかもしれない。そこで、南九州の常緑広葉樹二次林における主要構成樹種数種を対象とし、当年枝等のモジュールの形態を調査し、各樹種の光環境への反応を議論する。 |
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帯状伐採1年目のスギ林における林床の植生と光環境
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作田耕太郎
(九大農), 原田可奈水 |
単一樹種の同齢林における林床植生の多様性は、林齢や立地環境あるいは間伐など管理法によっても大きく異なる。我が国においては、いわゆる施業放棄型もしくは粗放型の林分が増加傾向にあり、生物多様性あるいは水土保全の面などから問題視されている。人工林における更新法の一つである帯状伐採は、素材生産・林地保全そして生物多様性維持など多面的に有効な手法とされ、伐採面に植栽された更新木の成長も皆伐地と比較して遜色ないとの報告もある。しかしながら、帯状伐採の行われた林分での生物多様性に関する研究報告例は多くはなく、事例的研究の積み重ねが必要である。本研究では、大分県大分市 (県民の森)における帯状伐採の行われた54年生スギ林を対象に伐採後1年目での林床の植生と光環境について報告する。 |