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暖温帯山地渓畔域に造成された針葉樹人工林における落下昆虫と魚類の分布
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松永慎平 (宮大院農), 中山真俊, 安田整樹, 伊藤 哲 |
渓畔域は陸域と水域の接点として重要な生態系であるが、その多くが土地開発や林種転換などにより消失または改変されている。特に暖温帯の渓畔域に対する改変は著しく、生物多様性の減少が危惧されている。こうした渓畔域の保全・修復技術を確立するために、現在の改変された渓畔域に生息する生物種や種間の関係、およびその生息場に関する知見の集積が望まれている。本研究では、渓畔域に特徴的な生物相として、河川内の魚類と、渓畔林から餌資源として供給される落下昆虫の関係に着目した。宮崎県高岡町去川国有林内の渓畔域に造成された針葉樹人工林において、河道上を被覆する樹木種とその被覆率、水面への落下昆虫、生息する魚類および河川空間の物理的環境を調査した。これらの結果を基に、人工林内での落下昆虫と魚類の分布を規定する要因を明らかにし、改変された渓畔域の生物多様性について考察する。 |
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熊本県菊池市における里山クヌギ林草本植生への土地利用履歴の影響
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小此木宏明
(東大院新領域), 福田健二 |
熊本県菊池市山間部にはクヌギ林が広範囲に広がっている。以前より薪炭林、シイタケ原木として利用されてきた林分の他、草地利用の低下に伴いクヌギ林化された林分、耕作放棄後にクヌギ林化した林分など、過去の土地利用は様々である。現在はいずれもシイタケ原木生産のためのクヌギ林として、多くの林分において下刈りなど継続的管理が行われている。しかし、管理放棄されてネザサに覆い尽くされ、多様性が低下した林分もあり、今後もそのような林分が増えることが予想される。クヌギ林の下層植生の多様性には現在の管理のほか、過去の土地利用が影響を与えているものと予想される。本研究では土地利用履歴の異なるクヌギ林を対象とした植生調査を実施し、過去の土地利用と現在の林床植生の関係について検討した。DCA解析の結果、Axis1上で各林分は土地利用履歴ごとに序列化され、土地利用履歴が現在の植生に影響を及ぼしていることが明らかとなった。 |
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山地渓流での落葉の分解過程とシュレッダーの定着
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原口正平 (宮大農), 高木正博 |
山地渓流内においての落葉の分解過程は日本では研究が進んでおらず、九州の山地ではほとんど行われていない。今回の実験では、イヌビワ、ホオノキ、イチイガシ、スギ、アオキの5種の落葉をリターバックに詰め、山地渓流内に沈めた。沈めたリターバックを定期的に回収し、乾燥重量を測定することで樹種別の分解速度を明らかにした。分解速度はイヌビワがもっとも大きく、イチイガシが一番小さかった。また、リターバック内に定着していた水生昆虫を採集、同定して、落葉の分解に大きく関連しているといわれているシュレッダーの個体数と重量を測定した。樹種別の分解速度とシュレッダーの個体数、重量の関係性について検討する。 |
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暖温帯山地渓畔域における人工林化が水生昆虫の種組成と分布に及ぼす影響
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中山真俊 (宮大農), 松永慎平, 安田整樹, 伊藤 哲 |
渓畔林は陸域と水域の接点として重要であり、その機能の一つに河川への有機物供給がある。樹冠による日射遮断が卓越する山地渓流では、水生植物による光合成量が少なく、水生昆虫は渓畔林から供給されるリターにエネルギー源の大部分を依存している。しかし、戦後の拡大造林政策によって多くの渓畔林は改変され、リター供給機能が変質している可能性がある。本研究では、渓畔林の人工林化がリター供給と水生昆虫に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、宮崎県南部の高岡町山地渓畔域の人工林区間と広葉樹林区間においてリターの種類とその有無に着目し、水生昆虫の種組成と分布を調査した。水生昆虫の種数と個体数共に広葉樹区間で多かった。また、その種組成から水生昆虫は、人工林区間で付着藻類を主要な餌資源として利用し、一方の広葉樹区間では広葉樹リターを利用していると考えられた。これらの結果を基に、渓畔林の人工林化の影響を考察する。 |
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暖温帯山地渓畔域における人工林化が下層植生に与える影響
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安田整樹 (宮大農), 川西基博, 松永慎平, 中山真俊, 伊藤 哲 |
渓畔域は陸域と水域の接点として重要な生態系であり、規模や頻度の異なる様々な攪乱体制に由来する高い生物多様性を有している。その中でも、草本層は微細な土壌攪乱にも敏感に反応し成立するため、渓畔域において特に多様性が高いとされている。しかし、渓畔域はその生産性の高さと伐出の利便性から選択的に人工林化されてきた。特に、暖温帯において渓畔域の改変は著しく、渓畔域が人工林化されることで林分構造が均一化し、本来の生物多様性が失われつつある。そこで本研究では、渓畔域が本来持つ生物多様性を回復させる技術を確立するための基礎的な知見を提供することを目的とし、宮崎県高岡町去川国有林内の渓畔域の針葉樹人工林および広葉樹二次林において、下層植生の種、被度および成立している微地形を調査した。これらの調査結果をもとに、人工林化が渓畔域の下層植生に与える影響を考察する。 |