411
沖縄本島北部広葉樹林の施業改善後の林分の動態について
生沢 均
(沖縄県森林資源研究セ),
今田益敬,
安里練雄
 沖縄本島北部地域は、亜熱帯島嶼特有の生態系を持ち、希少な野生生物種が多く生育している。一方、当該地域は沖縄県の林業の中心地であり、木材の生産拠点や温暖化防止の森林吸収源としての積極的な森林施業の推進が求められている。自然環境保全と木材資源の利活用の両立を図る一環として、演者らは環境に配慮した森林資源の循環利用を図る森林施業の検討を行っている。今回の発表では、南明治山試験林で実施してきた皆伐・択伐後に除伐を実施した試験地の35年間の林分構造の動態について紹介する。


412
スギの直挿し造林における挿し穂長が生存率に与える影響
山田康裕
(大分県林試)
 低コスト造林の1手法として、直挿しによる造林が挙げられるが、今回、スギの挿し穂の長さが挿し付け後の生存率に与える影響について調査を行った。スギ品種タノアカを用いて、挿し穂長が各30cm、40cm、50cm、80cm、100cmで試験を行った結果、30cmが最も生存率が低く、挿し穂が長いほど生存率の高い結果となった。この結果に関して、30cm区では、ススキ等の草本によって全体が被覆されていたことが、枯損率が高かった大きな要因として考えられた。一般の造林地に直接挿し付ける直挿しは、造林初期の成長は見込めないため、林地に生える草本との競争を考慮した場合、ある程度の穂の長さを確保した方が、その後の生存率を高める上で有利になることが示唆された。


413
リュウキュウコクタン(Diospyros ferrea)の開花、結実戦略における資源配分
西原史子
(琉球大院農),
谷口真吾,
中須賀常雄
 リュウキュウコクタンは沖縄島嶼域に生育するカキノキ科の常緑高木である。性型は雌雄異株であり、淡緑黄色の花をつけ、液果は成熟すると暗褐色となる。材は繊維が緻密で堅牢であり、三線の棹や建築材、家具材に利用される。リュウキュウコクタンは強風、潮風に強く、耐病性が高いため、栽培管理が容易で、庭園木、公園木、街路樹にも利用されている。このように、リュウキュウコクタンは用途が広く、造林や木材生産、ならびに緑化樹、防災樹として有用な樹種であるにもかかわらず、種子生産のための繁殖生態についての報告はほとんどみられない。本研究では、2年間にわたり、リュウキュウコクタンの開花、結実フェノロジーを個体別のモジュール単位で調査した。さらに、摘葉等の操作実験を行い、結実数を決定するメカニズムをシュートレベルの資源配分から考察した。


414
西表島オヒルギ林のギャップ更新に関する研究(U)
岸本 司
(沖縄国際マングローブ協会),
中須賀常雄,
増野高司
 西表島船浦湾マングローブ林の最奥部に位置するオヒルギ林内で、1982年秋台風により3本のオヒルギが幹折れしてギャップが形成された。翌年春には稚樹が更新したが、発生後4年経過した1986年に(10m×10m)の調査区を設定して追跡調査を開始した。発生20年間の経過について以前報告したが、その後の経過について今回最終報告する。


415
西表島のマヤプシキに関する研究(U)
中須賀常雄
(沖縄国際マングローブ協会),
岸本 司,
増野高司,
野村(坂内)さおり
 マングローブ林の主要樹種であるマヤプシキは世界的に広く分布している樹種である。日本では、沖縄県八重山地方の石垣島、小浜島及び西表島にのみ生育し、前2島では個体数は少なく林分は見られず、西表島北岸東部の大原から美原にかけて林分をなして生育している。演者らは、1973年からマヤプシキ林の林分構造や更新などについて調査してきたが、今回は、その動向について発表する。


416
雌雄異株性フクギ(Garcinia subelliptica)の雄株における性表現
谷口真吾
(琉球大農),
西原史子,
中須賀常雄
 フクギ(オトギリソウ科フクギ属)は雌雄異株性の常緑高木として、東南アジア、南太平洋諸島などの熱帯、亜熱帯域に広く分布する。沖縄島嶼域において、フクギは有用樹であり、造林樹種あるいは緑化樹、防災樹として広く植栽されている。発表者らは、6月と8月の年2回開花するフクギの花の性表現は、雄株に開花する「雄花」、雌株に開花する「雌花」、雄株に開花し、正常な(一部には退化した雄しべも散見)雄しべと正常な雌しべをもつ「両性花」の3性の性型を確認した。このため、フクギの性型は不安定であり単純な雌雄異株ではなく、複雑な性表現をもつ不完全性の雌雄異株であることを報告した(谷口ら、2007)。そこで本研究は、フクギの雄株における両性花の分化ならびに開花比率を調査するとともに、その原因を観察した。これらの結果から、雄株の性発現として、両性花が分化する生理的な解釈と適応的意義を考察した。