506
カシノナガキクイムシのクヌギへの寄生について
臼井陽介
(鹿児島県森林技術セ)
 カシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)がクヌギへ寄生することは知られている。しかし、カシナガのクヌギ林での寄生についての知見は少ない。鹿児島県では、県内数箇所のクヌギ林において、カシナガの寄生が確認され、その寄生状況や寄生木の枯損状況等を調査したので、その結果を報告する。


507
クロマツ実生に対する内生菌Phomopsis sp. の人工接種法の検討
畑 邦彦
(鹿大農),
米村 亮,
曽根晃一
 樹木の内生菌はその普遍性に比して生態に不詳の部分が多いが、これは人工接種の困難さに一因がある。そこで、クロマツ実生を材料に、主要な内生菌Phomopsis sp.の接種方法の検討を行った。接種方法としては、約5ヶ月間室内で生育させた成熟実生への有傷及び無傷接種、室内での発芽直後の幼弱実生への無傷接種、無菌瓶内での幼弱実生への無傷接種の三つを試みた。接種源としては本菌を生育させたバーミキュライト片を用い、接種は実生の地際にパラフィルムで接種源を巻きつけることによって行った。成熟実生への接種では、有傷接種でも無傷接種でも本菌は感染しなかった。無菌瓶内での幼弱実生への無傷接種においても本菌は感染しなかった。一方、室内での幼弱実生への無傷接種では、本菌が接種一ヵ月後で52%、二ヵ月後で42%の実生から分離された。以上より、室内での発芽直後の実生への無傷接種が本菌の有効な接種法と考えられた。


508
精英樹人工交配苗を用いたスギ品種改良試験地からの優良個体の選抜について
田上敏彦
(宮崎県林業技術セ),
倉本哲嗣
 近年、材価の低迷等により、木材収入では再造林やその後の保育経費が賄えない等から林業経営意欲が低下し、再造林放棄地が各地で発生し問題となっている。また、宮崎県は台風常襲地帯で、台風被害対策も林業経営上の重要な課題となっている。これらの問題を解決する一つの方法として、短期間で投資の回収が可能で、かつ台風被害のリスクも軽減できる、スギ優良品種の開発・利用が考えられる。しかしながら、本県におけるスギ造林地の多くはさし木苗を用いており、遺伝的変異も限定されることから、一般の造林地からの新たな選抜は困難な状況にある。そこで今回、本県において「スギの品種改良試験」として、精英樹同士(一部、精英樹と在来品種)による人工交配苗により造成された試験地から、樹高、胸高直径等の成長形質、ヤング率等の材質形質を調査し、省力・低コスト林業に対応したスギ優良個体の選抜の可能性について試みたので報告する。


509
クロマツのさし木発根性に及ぼすさしつけ方法と用土の影響
大平峰子
(九州育種場),
松永孝治,
倉本哲嗣,
山田浩雄,
白石 進
 マツ材線虫病抵抗性クロマツをさし木で生産するにあたり、さし つけ方法(密閉ざし・ミストざし)が発根性に大きな影響を及ぼす ことが明らかとなっている。密閉ざしの灌水は1〜2週間に一度行 うため、ミストざしで使用する用土では発根性が異なる可能性が考 えられる。そこで本研究では、密閉ざしおよびミストざし環境下で 10種類の用土を用い、両要因がクロマツのさし木発根性に及ぼす影 響について解析した。その結果、発根率はさしつけ方法および用土 間に有意差がみられたが、交互作用は有意でなかった。一方、根の 長さは用土間に差がみられず、さしつけ方法間で有意差がみられ た。これらの結果から、さしつけ方法に関わらず発根に適した用土 があり、用土は不定根の形成過程で影響を及ぼすが、発生した根系 の発達には大きく影響しないと考えられた。


510
ナンゴウヒ主要クローンのさし木発根性
草野僚一
(熊本県林研指)
 ナンゴウヒは、熊本県南郷谷地方で主に造林されているヒノキさし木在来品種で、樹幹が通直完満で、とっくり病にかかり難いという特性を有している(宮島,1989)。一方で、ナンゴウヒは複数のクローンからなる品種であることが報告されている(田島・宮崎、1973;Uchidaら、1993;家入・宮島、2000)。また、ナンゴウヒは、実生ヒノキと比較して高い発根率を示すことが報告されているが(宮島、1989)、クローンごとに発根率が異なるかは明らかではない。そこで今回、ナンゴウヒの主要クローンについて、発根率の調査を行ったので、結果を報告する。