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鹿児島県奄美大島におけるクロマダラソテツシジミChilades pandavaの被害と有効薬剤の検討
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岩 智洋
(鹿児島県森林技術セ) |
鹿児島県奄美大島では、2007年9月にクロマダラソテツシジミが侵入し、ソテツCycas revolutaに深刻な被害を及ぼしているため、2008年9月から10月にかけて、被害調査を行った。また同時に、トレボン及びダントツによる薬効薬害試験を行った。その結果、奄美大島全市町村で被害が確認され、また、トレボン1000倍及びダントツ1000倍に一定の防除効果があると示唆された。 |
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樹幹注入によるヤシオオオサゾウムシ防除技術の改良
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齊藤真由美
(宮崎県林業技術セ), 讃井孝義 |
宮崎県で多発するカナリーヤシのヤシオオオサゾウムシ被害対策として、筆者らは殺虫剤の樹幹注入による防除試験を行い、一定の効果があることを確認した。しかし、材積が大きくなると注入薬剤量が増え費用が高くなる等の問題があり、実用化には至っていない。そこで、実用化のために注入位置の高さを変えることで薬剤量の削減を試みた。樹幹注入後、一定期間毎に被害状況を調査した結果、注入高さを変えることで、薬剤量を削減しても4ヶ月までは高い防除効果があることが分かった。また、加害木へ樹幹注入を行い、樹勢の推移を調査した結果、注入後に月1回程度の定期観察を行い、被害の進行が確認された時点で再注入することで、被害の進行防止及び樹勢回復が見込めることが分かった。 |
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沖縄県における松くい虫の天敵クロサワオオホソカタムシについて
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喜友名朝次
(沖縄県森林資源研究セ) |
環境にやさしい松くい虫防除技術が求められている近年、国内では天敵に関する研究がいくつか報告されている。沖縄県においても松くい虫駆除地域の再発を抑え、微害を維持するために天敵を利用した新たな防除技術の開発が求められた。これまでの調査から、南西諸島に生息するマツノマダラカミキリの天敵としてクロサワオオホソカタムシを有望種として選抜した。今回は、クロサワオオホソカタムシの生態や人工増殖について分かったことを報告する。 |
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屋久島におけるカシノナガキクイムシによるマテバシイ集団枯損の記録
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後藤秀章
(森林総研九州), 濱口京子, 所 雅彦, 升屋勇人 |
屋久島で発生したカシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)によるマテバシイの集団枯損について報告する。カシナガは、ナラ類の集団枯損の原因であるRaffaelea quercivoraの媒介者である。その分布は広く、国内では本州、四国、九州から南西諸島、海外では東南アジアから南アジアの一部にまで記録がある。一方で本種による枯損は本州、四国、九州と奄美大島からしか記録されていない。屋久島からはこれまでにカシナガの分布は記録されているが、 枯損は見つかっていなかった。その屋久島において、2007年にカシナガが原因と推測されるマテバシイの集団枯損が発生した。カシナガの分布が確認されている地域において枯損被害が発生するのは、集団枯損が頻発する1980年代以降では2例目であり、枯損頻発の原因を考える上で興味深い。本研究では、今回発生した枯損の経過を記録し、原因を特定する目的で調査を行った結果を報告する。 |
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花粉の少ないスギ在来品種の材質
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森 康浩
(福岡県森林技セ), 大川雅史, 宮原文彦 |
全国的に少花粉品種の開発が進んでいるが、在来品種にも花粉が少ないものが認められるため、その材質を調査した。福岡県小郡市のスギ在来品種保存林(現20年生)において、1995〜1997年に雄花の自然着花量が少なかった16品種(1品種3〜10個体)を対象に、動的ヤング係数と高い相関をもつFAKOPPの伝播速度を測定した。その結果、3年間の平均雄花着花指数(1.0=無着花、5.0=極多)が1.1のリュウスギや1.0の民間選抜品種星野1号が高い値を示した。さらに心材含水率の非破壊評価のため、横打撃共振法によるFFTアナライザの周波数fと打撃部位の直径dを測定した。非破壊評価値1/dfと一部伐採した個体の心材含水率との相関を調べたが(n=26)、相関係数は−0.038と低かった。伐採した14品種の中では、アヤスギ、ヤブクグリ、ホンスギ、アカバ(4品種とも着花指数1.0)の心材含水率が低い値を示した。 |