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帯状・群状択伐林における鳥類多様性
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松本 純 (九大生資環), 溝上展也, 吉田茂二郎 |
針葉樹人工林は日本の森林面積の4割を占め、生物多様性保全の観点から無視することはできない。しかし、その多くが一斉皆伐による単一種の同齢林分であり、人工林での生物多様性の低下が懸念されている。帯状択伐施業は複層林施業であり、多様な下層植生を持つことから生物多様性の保全効果が期待されている。しかし、造成例が少なく、生物多様性に対する影響は明らかになっていない。そこで本研究では帯状択伐林における鳥類多様性の評価を行った。2008年5月〜2009年5月に大分県民の森および大分県九州林産社有林における伐採林にて、ポイントセンサス法を用いて調査を行った。0年生では個体数や多様度に大きな差はなかったが種構成に違いが見られた。40年生の帯状択伐林は同齢の一斉林と比較して確認個体数・多様度ともに高い傾向が見られた。長期的な視点で見ると、帯状択伐林の方が生物多様性の保護に貢献することが示唆された。 |
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佐賀県産スギ精英樹F1クローンの成長解析(U)
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真崎修一 (佐賀県林試), 倉本哲嗣 |
近年、材価の低迷から従来の標準伐期齢での主伐による林業経営が困難になっている。このため、短伐期で収穫可能で、かつ気象害等のリスクを軽減できる、従来より成長が早い次世代品種の開発が求められている。佐賀県では新しいスギ優良系統の創出を目的として、精英樹のF1系統の育成・試験林設定を昭和39年から昭和40年代に行っている。その後、F1系統試験林の10年生次調査結果から生育・通直性等の優良なクローンを選抜し、昭和50〜60年代にかけてF1選抜クローン試験林を設定している。これまでにF1選抜クローン試験林2カ所の20年生次調査結果から、スギ次世代品種が選抜できる可能性を示した。今回はより精度の高いF1選抜クローンの評価を行うため、県内6箇所のF1選抜クローン試験林等の20年生次調査結果をもとにF1クローンの成長特性を解析したところ、現在のスギ精英樹に比べ成長特性に優れたF1クローン(スギ次世代品種候補)が存在していたので報告する。 |
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鹿児島県におけるスギ精英樹次代検定林の材質調査
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宮里 学 (鹿児島県森林技セ) |
鹿児島県では精英樹の特性を明らかにするために、昭和44年度からスギ精英樹のクローン検定林の造成と成長量調査を行っている。また、平成8年度から材質調査を実施しており、平成20年度末現在で11箇所の次代検定林を調査し、スギ精英樹の材質に関する基礎データが集積されている。そこで今回は、これまでの調査結果について解析を行ったので、その結果を報告する。 |
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15年生スギ育種集団林九熊124号における成長及び材質形質の遺伝パラメータの推定
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松永孝治 (九州育種場), 倉原雄二, 倉本哲嗣, 大平峰子, 山田浩雄, 中島久美子, 湯浅 真, 阿部正信 |
九州育種場では精英樹同士の交配家系の中から、従来の品種より優れた性能を持つ第2世代の精英樹を選抜する事業を進めている。建築用材等素材としてスギの利用を考える場合、成長だけでなく材質に優れることが重要であり、そのような木材を生産できる品種の早期の開発が必要であろう。そこで本研究では分断要因交配で設計された15年生の実生林(育種集団林)において樹高等成長形質および材質の指標としてファコップによる応力派伝播速度を一部調査した。これらの各形質の遺伝性と形質間の関連性について解析を行い、優良品種の選抜方法について検討したので報告する。 |
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九州育種基本区におけるスギ精英樹クローンの成長量変動に関する基礎解析
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倉本哲嗣 (九州育種場), 松永孝治, 大平峰子, 倉原雄二, 湯浅 真, 中島久美子, 山田浩雄 |
森林総合研究所林木育種センター九州育種場では、九州育種基本区内で選抜されたスギ精英樹クローンについて検定林を設定し、成長量等に関する調査ならびに遺伝的特性について解析を行ってきた。その結果、推奨品種などの優れた成長を示すスギ精英樹クローンは、その他の精英樹クローンに比べ、おおむね九州各地で優れた成長を示していた。しかしその成長量は植栽箇所によって変動していることから、今後の効率的で計画的な林業経営のため、クローンごとに具体的な収穫予測に関する情報を提供する必要があると考える。そこで、スギ精英樹12クローンがセットになって植栽されている検定林の調査結果から、スギクローンの成長量変動がどのような環境要因によって影響されているか、またどの程度変動するのかについて、GIS情報から得た気象や土壌などの環境条件を元に基礎的解析を行ったので報告する。 |
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マテバシイの葉上に発生した小粒点
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藤 香 (鹿大農), 曽根晃一, 畑 邦彦 |
鹿児島県垂水市の鹿児島大学農学部附属高隈演習林においてマテバシイ葉上に多数の小粒点が発生していた。小粒点は直径約0.2-2mmで、黒色、赤褐色、白色を呈するものがあった。黒色の小粒点は卵形二細胞の子嚢胞子を生じ、子実体、子嚢及び子嚢胞子の形態からカシ類裏黒点病菌Coccoidea quercicolaと同定された。赤褐色の小粒点は楕円形多細胞の子嚢胞子を生じ、子実体、子嚢及び子嚢胞子の形態から同じく裏黒点病菌とされるUleomycesdecipiensと同定された。白色の小粒点については、星形の分生子を生じていた。C.quercicolaについてはマテバシイでも裏黒点病菌として報告されているが、U.decipiensについてはマテバシイでは知られていない。白色の小粒点については昆虫寄生菌の可能性も考えられた。高隈ではこれらの小粒点はマテバシイでのみ確認されている。 |