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巻枯らし間伐林における残存木へのキバチ類の影響
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吉本貴久雄 (長崎県農林技術開発セ), 清水正俊, 森口直哉 |
間伐手遅れで過密となった人工林を強度間伐して短期に適正密度林分へ誘導する手法として「巻枯らし間伐」がある。しかし、巻枯らしされたスギ・ヒノキは除々に枯れるため、二次性の昆虫類の繁殖源になりやすいと思われ、このことが残された健全木へどのような影響を与えるかは不明である。そこで、変色被害を引き起こすキバチ類の影響について通常の伐り捨て間伐と比較して調査したので報告する。 |
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カバノキ科樹種の材識別のためのデータベース構築
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田川真理 (九大農), 白石 進 |
木材の樹種識別を行う際、一般的な手法は木材組織学的な手法である。この手法は種レベルまでの識別が難しいとされている。一方、近年、種特異的なDNA情報を用いた識別の試みが行われている。本研究では、DNA分析を用いた一元的な樹種識別法を確立するた めに、本邦産カバノキ科樹種5属15種のデータベース構築を行った。材中DNAは劣化により低分子化が進んでいるため、分析対象領域として、高頻度反復配列の18S rDNAと26S rDNAの9領域(すべて500bp以下)を用いた。PCRにより9領域すべての増幅に成功した。また、塩基配列分析の結果、塩基長多型はなく、46箇所の塩基置換サイトが検出され、13種が識別できた。今後、これらの種内変異についても検討し、カバノキ科の材の識別の可能性について報告する。 |
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スギの根組織を用いたDNA分析
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スハリヤント (九大生資環), 白石 進, 大橋瑞江 |
近年、根系空間分布の研究が行われるようになってきた。根の形態学的特徴等から樹種や個体を識別することは難しく、DNA分析による鑑定が行われている。しかしながら、スギの根からのDNA抽出は難しく、広く使用されているCTAB法だけでは、PCRで使用可能な良質の鋳型DNAを得ることは困難である。そこで本研究では、簡便で信頼性の高いスギの根からのDNA抽出・精製法の開発を行った。その結果、粗DNA溶液をアガロースゲルで分離し、高分子DNA分画のみを回収することにより、根の直径が1mm以下、1〜3mm、3mm以上のいずれの試料においてもPCR増幅が可能なDNAを調整することができた。また、同一個体の根と針葉それぞれから調整したDNAは、同一のMuPS (Multiplex-PCR of SCAR)パターンを示した。このことより、本抽出・精製方法はスギ根からのDNA調整に有効かつ実用的な方法であると考える。 |
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持続可能で多様な森林造成技術の開発 −小面積帯状伐採と次世代優良苗植栽−
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山形克明, 宮本和美 (九州森林管理局森林技術セ), 松永孝治 |
現在、国産材の需要が増加する傾向にある中で、九州の国有林では「簡易で壊れにくい作業路」による素材生産コストの低減や流通改革に繋がる大規模工場への「システム販売」に取り組むことにより、国産材時代の先駆け的な役割を果たしている。一方、民有林においても需要の増大から大面積の皆伐が行われるとともに、その後の「植栽放棄地」の増加が問題となっている。これらのことから、森林の持つ多面的機能を維持しながら、更新・保育コストを低減することを目的として、成長スピードの速い精英樹や「スギ次世代優良品種」をHA当たり1、000本〜2、000本の密度で植栽した試験地を昨年度設定したので、これまでの経過について発表する。 |
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トチュウ雌雄判別のためのPCRプライマーの設計
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宮崎麻実 (九大農), 陳 任, 玉泉 幸一郎 |
トチュウ(Eucommia ulmoides Oliv.)は、ゴムを合成する産業的に有用な雌雄異株の多年生植物である。ゴム含有量は雄株よりも雌株が多いため、雌雄判定により、雌株を選抜する必要がある。Xuら(Euphytica,2004)は、RAPDとSCARマーカーによるトチュウの雌雄判別法を開発した。しかし、この方法では電気泳動時に多数のバンドが現れ、判別が難しい。本研究では、感度の高いPCR条件を検討し、SCARマーカーを用いたPCR産物のシークエンスで得た塩基配列から雌雄判別に特異的なプライマー設計を行い、明確な雌雄判別法とした。 |