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繁殖分布の周辺域におけるアカヒゲの生息状況(II):種子島および屋久島
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関 伸一
(森林総研九州) |
アカヒゲは南西日本に固有のツグミ科の小鳥で、国指定の天然記念である。アカヒゲが継続的に記録され、確実に繁殖しているのは男女群島、トカラ列島北部、奄美群島、沖縄島のみであるが、その周辺には近年の生息状況が不明な地域がある。アカヒゲの保全にあたって繁殖地の環境条件を把握する上でも、また、集団構造を理解する上でも、正確な繁殖域を明らかにすることは重要な課題である。本講演では、過去に繁殖期の記録があり繁殖の可能性が高いとされていた大隅諸島の種子島および屋久島について、生息状況調査と文献調査とを行った。生息状況調査は、島内各地の照葉樹林とその周辺の任意の地点で、定点観察とさえずりの録音再生音への反応の記録する方法で広域的に行った。その結果、種子島・屋久島ともに、繁殖期にはアカヒゲの生息を確認することは出来なかった。講演では過去の記録も検討し、この地域におけるアカヒゲの繁殖の可能性について考察する。 |
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絶滅危惧種ノグチゲラの樹洞提供者としての役割
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小高信彦
(森林総研九州), 外山雅大, 渡久地 豊 |
ノグチゲラは沖縄島北部やんばる地域の照葉樹林に固有の中型のキツツキで、国の特別天然記念物に指定されており環境省およびIUCNのレッドリストでは絶滅危惧種にランクされている。キツツキ類は、一般に繁殖のために自ら樹木に巣穴を掘ることのできる一次樹洞利用種である。一次樹洞利用種の掘った巣穴は、自ら巣穴を掘ることのできない鳥類や哺乳類などの二次樹洞利用種にとって、営巣やねぐら場所として重要な資源となることが知られている。本研究では、ノグチゲラの樹洞提供者としての役割を明らかにするため、本種が繁殖のために掘った巣穴を追跡調査し、巣穴の状態や利用状況を記録した。古巣の主な利用者は、リュウキュウコノハズクやヤマガラをはじめとする樹洞営巣性鳥類であった。古巣は、時間経過に伴い利用率が低下したことから、ノグチゲラによる継続的な樹洞の提供が、樹洞を利用する森林動物群集の多様性維持に重要であることが示唆された。 |
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南九州でのヤシオオオサゾウムシの飛翔第1ピーク時の飛翔パターン
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安部布樹子 (鹿大農), 畑 邦彦, 曽根晃一 |
ヤシオオオサゾウムシによるカナリーヤシの被害は1998年に宮崎県での報告がされてから、岡山県、福岡県と続き現在も2007年神奈川県、2008年佐賀県と発生地域を拡大させている。本州での被害は一時的であることが多いが、南九州では被害が確認されてから現在まで本種による加害が継続している。そこで本研究では、南九州(宮崎市、指宿市・枕崎市、鹿児島市)での飛翔第1ピーク時である6月の飛翔パターンをフェロモンとラップ14器、直接捕獲、目視により調査した。調査は、6月13日から26日の間の内、延べ7日間行った。その結果、ヤシオオオサゾウムシは降雨時は飛翔しないことがわかった。また、飛翔は11時から17時まで行われ、飛翔のピークは14時台であり、この間の林間部の温度は22℃〜29度だった。 |
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誘引餌の違いによるスズメバチ捕獲効率の検討
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小坂 肇 (森林総研九州), 佐山勝彦, 牧野俊一 |
スズメバチの刺傷被害防止のため、各地でペットボトルを利用したトラップ(ハチを捕るための罠)による捕獲が行われている。北海道で高い効果を示した2種類の誘引餌(1焼酎とジュースの混合液、2ハチミツ希釈水)を用い、九州でも同様の効果があるか、また誘引餌により効果に差があるかどうかを調べた。2009年5月7日に森林総合研究所立田山実験林内の3ヶ所に2種類の誘引餌を入れたトラップを隣り合うように設置した。7月9日までに、焼酎とジュースの混合液で151匹、ハチミツ希釈水で202匹のスズメバチ(オオスズメバチ、コガタスズメバチ、ヒメスズメバチ、モンスズメバチ、クロスズメバチの5種)が採集された。設置初期には焼酎とジュースの混合液が高い誘引効果を示 したが、次第にハチミツ希釈水の誘引効果が高まった。これら2種類の誘引餌は九州でも効果が高いことが確認されたが、その効果には差があることも示唆された。 |
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森林性鳥類による湧水池の利用状況
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芦原誠一, 平田令子 (鹿大院農), 畑 邦彦, 曽根晃一 |
森林性鳥類による湧水地の利用状況を明らかにするために、2007年10月〜2008年11月まで、鹿児島大学高隈演習林の冷水谷湧水池に自動撮影カメラ(FieldnoteU)を1台設置し、飛来する鳥類を一年間撮影した。カメラのフィルムと電池はできる限り途切れないように交換し、撮影可能な状態を保つようにしたが、期間中約66日間は撮影が中断された。調査の結果、鳥類は全部で154枚撮影され、15種を判別することができた。鳥類は調査期間中毎月撮影されており、特に12月と1月の枚数が多かった。撮影時間帯は6:00〜19:00の間であったが、撮影枚数に明瞭な時間的パターンは見られなかった。湧水池は夏鳥のキビタキや冬鳥のシロハラ、留鳥のキジバトや旅鳥のアカハラダカ、また、オオルリの幼鳥などによって利用されていた。これらのことから、湧水池はその地域に生息する様々な種の鳥類によって様々なプロセスにおいて利用されることが分かった。 |