701
沖縄本島北部における人為インパクトの立地環境への影響−予報−
大貫靖浩
(森林総研九州),
釣田竜也,
生沢 均,
今田 益
 沖縄本島北部地域は、亜熱帯島嶼特有の生態系を持ち、希少な野生生物種が多く生育している。一方、当該地域は沖縄県の林業の中心地であり、木材の生産拠点や温暖化防止の森林吸収源としての積極的な森林施業の推進が求められている。自然環境保全と木材資源の利活用の両立を図る一環として、演者らは昨年度から沖縄県国頭村に試験地を設定し、各種森林施業等の人為インパクトが、林床被覆や土壌水分にどの程度の影響を与えているかについて調査を開始した。今回の発表では、研究の背景、試験地の立地環境、土壌水分状態を中心に紹介する。


702
ヒノキ林と広葉樹林における林内雨、樹幹流、および土壌水中の無機イオン濃度の比較
山本香織
(宮大農),
高木正博
 広葉樹林と針葉樹林の渓流の増水時における水質を比較した結果、渓流水中の硝酸イオン濃度が80年生以上の林齢で有意な差が認められた。具体的には、広葉樹林のほうが針葉樹林よりも硝酸イオン濃度が低かった。そこで今回の調査では、この原因を解明するために、80年生以上の広葉樹林とヒノキ林で林内雨、樹幹流、および土壌水をそれぞれ採取し、分析した。その結果、硝酸イオン濃度は広葉樹林の方が針葉樹林よりも低く、特に、土壌水での差が顕著であった。


703
スギ林の表層土壌の化学性について([)−スギ葉枯症の調査例−
福里和朗
(宮崎林技セ),
齋藤真由美,
小田三保,
三樹陽一郎,
世見淳一
 本県では県中北部を中心に40年生前後のスギ林内で先端部の1年生葉が枯死する現象がみられるようになった。当初、病原菌の関与が疑われたが、その可能性は低いとされている。また、土壌養分や針葉の養分含有率等について調査が行われてきたが、葉枯の原因については明らかではない。今回は美郷町他の数カ所の地域のスギ葉枯症林分を対象に、林分の状況、表層土壌の塩基含量等について調査を行ったので、その概要について報告する。


704
九州北部の森林小流域における降雨イベント時の渓流水質の変動特性
釣田竜也
(森林総研九州),
大貫靖浩,
清水貴範
 近年、人為起源の窒素や硫黄などの排出量が増大傾向にあり、これらが森林生態系の養分バランスを崩し、渓流水質にも影響を及ぼすことが懸念されている。このような森林生態系の応答を明らかにする上で、小流域を対象に雨水や渓流水等の水質・水量の長期モニタリングを行い、森林生態系の物質収支を把握することは重要である。発表者らは、熊本県北部の鹿北流域試験地内の森林小流域において、月2回程度の降水と渓流水の定期採水に基づき、窒素等主要成分の物質収支を算出した。しかし、月2回の採水間隔では結果的に降雨イベント時の渓流水データが少なく、したがって降雨イベント時の物質流出量の評価が不十分である可能性がある。そこで本発表では、対象試験流域における降雨イベント時の主要成分の変動パターンを明らかにし、定期採水のみに基づいて算出した物質流出量の妥当性を検討する。


705
スギ林土壌の地形による違いと径時変化
佐々木重行
(福岡県森林林業技術セ)
 1962年の植栽された無間伐スギ林で10m×10mの格子を設定し、1991年と2005年に約150点の土壌調査と土壌採取を行い化学性の分析を行った。A層厚さ、土壌硬度、土壌pH、交換性塩基濃度(2005年のみ)の地形による違いや、土壌植栽前の1958年に同じ地点で行われた土壌調査の値との比較を行った。