709
スギ試験林における引き倒し試験
茅島信行
(福岡県林試),
佐々木重行
 台風災害に強い森林づくりを進めるにあたっては、根返りや幹折れといった風害に関する樹木の力学的な評価を行う必要がある。そのためには、立木の引き倒し試験を実施し、胸高直径や樹高といった樹木の地上部情報と、根返りや幹折れに対する抵抗力との関係を把握することが重要である。立木の引き倒し試験は主に本州のスギ・ヒノキを中心に実施されており、九州におけるスギ・ヒノキの引き倒し試験に関する知見は少ない。そこで今回スギ試験林において樹木の引き倒し試験を行い、胸高直径、樹高などの地上部情報と、最大根返りモーメントとの関係を調査したので報告する。


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雲仙普賢岳における火砕流堆積地周辺の植生状況
川本啓史郎
(長崎県農林技術開発セ),
前田 一,
副山浩幸
 雲仙普賢岳は、雲仙火山の主峰である。1990年11月に約200年ぶりに噴火を開始した雲仙普賢岳は、火砕流により山腹斜面の森林を埋没させるなどの被害を与えた。長崎県は、現在森林土壌を用いて火砕流堆積地を緑化する工法を検討している。このため、目標とする森林を検討する中で、火砕流堆積地周辺の植生について下記の3区分により調査を行ったのでその概要を報告する。
・1792年の噴火により溶岩が流出した地域内における現在の森林
・1990年から95年の火砕流堆積地における現在の植生
・1990年から95年の被災地域内の残存林分における現在の植生


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水位低下の場所による地すべり斜面の安定性の変化
浅野志穂
(森林総研九州)
 大規模な地すべりは一旦動き始めると膨大な力が作用するため、防止対策として杭工などの抑止工では限界があり、地下水排除工などの抑制工が中心となる。特に大規模な地すべりでは対象面積が広く、対策工の効果を考える上で排水工の設置場所の合理的な選定手法が求められているところである。本研究では、三次元的な地形的特性を有する大規模地すべり地を事例として、現地調査結果に基づく解析的手法により、地下水排除工設置による地すべり安定性の変化について検討を行い、水位低下が地すべり安定に及ぼす影響の大きい場所の特徴について検討した。


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風洞実験による人工砂丘防風効果範囲の推定
萩野裕章
(森林総研九州),
野口宏典,
島田和則,
坂本知己
 茨城県波崎海岸にある人工砂丘の高さは、内陸の海岸林を適切に育成するため砂丘による防風効果の推定範囲を一つの参考要素にして決められる。ただし人工砂丘の防風効果に関する既存の研究成果は、風が砂丘に対して正面(直交方向)から吹く場合を想定しているものがほとんどのようである。しかし波崎海岸で吹く風の主風方向は砂丘に対して斜め方向からであり、そのようなケースは全国各地で見られると予想する。そこで筆者らは砂丘に対して風が斜め方向から吹く場合の防風効果範囲及び風が砂丘提体を越えた後の風向を調べる目的で風洞実験を実施した。今回の発表では砂丘模型に対して正面から吹く風のパターンTとパターンTの模型を風洞内で67.5°回転させ斜め方向から風が吹いた場合を想定したパターンUの実験結果を報告する。