901
沖永良部島におけるアラゲキクラゲ栽培の安定化に関する調査
大久保秀樹
(鹿森技セ)
鹿児島県の沖永良部島では、バガス(サトウキビの搾りかす)を培地としたアラゲキクラゲの栽培法が開発され、昭和59年から生産が行われている。この工場は、以前は国内では数少ない菌床キクラゲ工場として国内産の大部分を占めていたものの、近年、発生量に季節的なバラツキが生じるようになったことから、原因究明と対策について、当センターへ調査依頼があった。 現地調査及び培養室・発生室の環境調査を行った結果、夏の培養室の高温による培養不良と秋の発生室の乾燥により秋〜冬の発生量が落ち込んでいるものと考えられた。それらの対策として、施設・設備の補修、散水方式・パターンの見直しを提案した。また、キノコバエ・ダニ・害菌の発生も見られたことから、これらの対策についても提案した。


902
菌床アラゲキクラゲ栽培試験について
新田 剛
(宮崎県林業
技術セ),
太田原潤一,
黒木泰代
現在、キクラゲ類は主に中国などで栽培され、日本には乾燥品が輸入されている。しかし、近年、消費者の食の安全・安心に対する関心の高まりや中国産きのこからの農薬検出等の問題から、国産品への需要が高まっており、宮崎県内でも数件の生産者が栽培を行っている。そこで、今回、県内で菌床栽培に使用されている市販種菌等を用いて栽培試験等を行ったので、それらの結果を報告する。


903
タモギタケの遺伝地図作成に向けた解析用交配菌株の作出
宮崎和弘
(森林総研九州),金子周平,
玉井 裕
タモギタケは、北海道から東北にかけて人気の高いきのこであり、天然物や栽培物が市場に出回っている。しかしながら、九州では敬遠されがちで、市場に出回ることはほとんどない。その理由には、第一に子実体の色があざやかな黄色であること、次にニオイが他のきのこ類に比べて強いことなどがあげられる。今後、九州でタモギタケの栽培・販売をすすめていくためには、九州で受け入れられるよう、一部の特性について品種改良を行う必要性があると考えれる。そこで我々は、タモギタケの計画的な遺伝育種の実現に向け、量的形質遺伝子座解析等の遺伝解析を可能とするため、遺伝地図の作成を行うこととした。今回はまず、連鎖解析に適した遠縁交配菌株を作出するため、ITS(Internal TranscribedSpacer)領域の塩基配列から、タモギタケの野生菌株間の遺伝距離を算出し、遺伝的に関係の遠い菌株間で交配菌株を作出した。


904
カキ剪定枝を用いたヒラタケ栽培
上田景子
(福岡森技セ),金子周平,
水海吉太郎,
田中研実,
近藤隆一郎
カキ果樹園内で発生する剪定枝の有効利用および腐朽促進を目指して、カキ剪定枝を菌床の培地に用いたヒラタケ栽培試験を行った。培地は、粉砕した剪定枝に栄養材(米糠)を添加する区としない区に分けた。殺菌は行わず、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus 菌株名BMC9073)のおがこ種菌の量を段階的に変える試験区を設けた。これらを2.5kgずつ培養袋に詰め、温湿度無調整の室内で83日間培養を行ったところ、旺盛に成長し、培養中に害菌汚染は見られなかった。発生は、プランターにカキ剪定枝を敷き詰め、ここに培養菌床を袋から出して1cm程上面が出るように埋め込み、上からボラ土を軽く被せた。プランターは、林内に置き、寒冷紗で周りを覆った。10月中旬から、いずれの試験区でもヒラタケの発生が見られ、米糠無添加区でも栽培が可能と分かった。しかし、米糠を添加すると収穫回数が多く、収量も高いことが分かった。