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入会林野の崩壊と森林管理上の問題点
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枚田邦宏
(鹿大農), 山本ジェーミー順子 |
地域で共同で管理・利用する入会林野が、今日でも各地に存在している。この入会林野については、権利関係の明確化や近代的な契約関係を結ぶために解体、整備の方向が打ち出されたこともあった。一方、地域自然資源の共同利用・管理の現代的な価値の評価の中、入会林野形態の現代的な価値を見いだし、入会林野形態を維持しようとする論も見られる。本発表では、長崎県の入会林野の事例から、入会林野の崩壊過程と森林管理上の問題点を指摘することにより、地域の森林管理上における入会林野の課題を明らかにする。 |
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慣行共有林の集約化施業への移行実態:天草市新和地区の事例
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大地俊介
(宮大農) |
慣行共有林は、近年の集約化施業〔所有と経営の分離〕のなかでしばしば重要な役割を果たすようになっているが、その実態についてはほとんど報告されていない。そこで本研究では、集約化施業における慣行共有林野の特徴を整理した上、熊本県天草市旧新和町における事例を取り上げ、その移行実態について検討した。旧新和町の事例では、高齢化のため集落の自営が困難となっており、集団的な所有関係から速やかに集約化施業へと移行した。未整理入会林野であったため、権利関係は曖昧なままであったが、慣習に基づく合意形成により紛争を回避していた。しかし、一方でその慣習も徐々に弛緩してきており、潜在的なリスクになっていることが認められた。このことから、慣行共有林野は集約化施業の起点となりうるが、集落組織の弱体化とともに権利関係のリスクが高まると考えられ、入会林野整理という手法も含めて慣習の再編成が求められていると考えられる。 |
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森林組合による提案型集約化施業の課題
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奧山洋一郎
(鹿大演), 小森勝士, 枚田邦宏 |
民有林における森林施業推進の障壁の一つが、所有規模の零細化・所有者の細分化である。それを解決するために、森林所有者にコスト・収入等を明示しながら積極的に施業を働きかけ、隣接する所有者をとりまとめて効率的な生産を志向する提案型集約化施業が推進されている。本報告では、提案型集約化施業を積極的に推進している鹿児島県S森林組合を事例に、民有林における施業推進にあたっての課題を考察した。S組合では「事業推進員」の配置やGISの整備などにより、組合員所有林の団地化は以前より進めていたが、小規模零細な所有者が多く、施業地が虫食い状態となっていた。施業の効率化を推進するために2008年頃から施業集約化を開始した。集約化により森林施業計画を策定した地域を見ると、在村の組合員所有地の間に非組合員所有地や不在村所有地が点在しており、施業地の面的な広がりを確保するためには組合に多大な負担が必要なことが明らかとなった。 |