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大分県における伐採活動の現状 −伐採届出書の分析−
増村恵奈
(九大生資環),
佐藤宣子
近年、我が国では人工林が伐採期を迎え、主伐面積が増加している。一方、2011年の森林法の改正により伐採および伐採後の造林届出書の提出が厳格化されている。伐採の現況を把握するには伐採および伐採後の造林届出書の分析が有効と思われる。そこで、素材生産活動が活発化している大分県の日田市、佐伯市から伐採および伐採後の造林届出書を入手し、伐採届出者の業態、伐採面積、伐採齢、伐採後の造林樹種等の項目について分析を行った。

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公的機関による私有林地の取得と管理 −宮崎県企業局の「緑のダム造成事業」の意義−
山田茂樹
(森林総研九州),
佐藤宣子
林家の高齢化、不在村化、後継者難の進行や木材価格の国際水準化などによる林地売却が各地でみられる。これら林地の管理を行う仕組みは持続的な森林管理を考える上で重要である。本報告では、ダム上流の未植栽地等の取得と水源涵養機能の高い森林としての整備を目的とする宮崎県企業局の「緑のダム造成事業」について、売却林地の受け皿としての機能という観点から、事業実績、取得林地の管理形態、林家からみた事業の意義などを把握・検討した。企業局は2006年度から5年間で22件、215haの私有林伐採跡地等を購入、84haで主に広葉樹植栽が、94haで下刈りが流域の森林組合への委託により実施された。売却者は高齢者が多く、後継者不在、木材価格低下等を理由とするが、公的機関への売却のため安心して任せられるという意識が強いことが示唆された。本事業は森林所有から退出する林家の林地の受け皿として一定の機能を果たしていると言える。

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戦後における森林売買の背景とその特徴 −近年の森林売買の特徴を明らかにするために−
沖土居尚美
(鹿大農),
遠藤日雄
ここ数年、特に世界経済が長いデフレから脱却して好況局面に入った2002年頃から、国内外の林業・林業外資本による森林買収の動きが顕著である。国内の林業外資本による森林買収は企業のイメージアップや持続可能な社会をめざす企業の社会的責任(CSR)の為、国内の林業関係資本(大規模製材業、木材流通業など)の場合は、原木の安定確保の為と考えられる。一方、国外資本の目的は明らかでなく様々な憶測がなされている。こうした近年の森林売買の背景と特徴を明らかにする為には、戦後何度か見られた森林売買の背景と特徴を整理する必要がある。それを大まかに整理すると、(1)高度経済成長期(特に日本列島改造計画の頃)、(2)バブル経済期、(3)2002年以降現在まである。本報告では、(1)及び(2)を対象に、当時の立木価格、丸太価格、林地価格、林業の動向に焦点を当て、さらに既存の研究文献で補完しながら課題にアプローチしてみたい。

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福岡県における素材の流通実態
大塚英隆
(福岡県森林技セ)
近年の世界的な木材需給のひっ迫により国産材自給率は増加傾向にあり、人口が多く木材の消費地となっている福岡県においても国産材需要が高まっており、とりわけ県産材の供給拡大を図ることが課題となっている。しかし、製材用の原木や製材品は近隣の有力な生産県からの移入が多くみられ、成熟期を迎えた県内の森林資源が十分に活かされていない状況である。そこで本研究では、県内の主要な林業事業体で生産された素材の出荷状況、原木市場での集出荷状況を調査するなど、県内の川上(素材生産)から川下(製材工場)までの木材の流通実態を明らかにし、各流通段階での問題点を抽出・分析し考察を行う。